語られている内容自体への賛否はともかく、ある意味で「民主主義」について示唆に富む本、と感じた。
政治のことはまともに知らない、それでいて、諸々の生活の状況はなかなか厳しいものがある感じのする女性ライターさんが、小川議員のところに突撃して、対話をしていく中で、日本の政治の現状について、学んでいく。それとともに、そうした過程を通じて小川議員自身も学んでいく、そういう様子が赤裸々に描かれている、というのが、この本のざっくりとした紹介ということになろうか。
冒頭、驚きを禁じ得ないのが、ライターさんは、文字通り無計画に、小川氏*1のところに、本を書きたいと飛び込んでいくところ。小川氏は、あきれることなく、ライターさんの思いを解きほぐすところから話を始めている。このあたりのやり取りは、氏が教育の道を選んだら、どうなるか、というところも想像させる。映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」の中で、氏のお父さんが、氏が政治家を辞めたら大学教員になるのがいいのではないかというようなことを述べていたことが頭をよぎった。
ライターさんの名誉のために述べておくと、最初は途方に暮れている感があったのだけど、資料などをしっかり読みながら、徐々に、議論を深化させていく、その学習スピードには目を見張るものがある(怒涛の寄り、というと怒られるだろうか)*2。そして、自分の心情・体験から離れることなく、地に足の着いた質問を小川氏にぶつけて、議論ががっぷり四つに組むところまで持っていくところのは流石と感じた。
これに対して、小川氏は、議論から逃げない。与党の政治家とはそこが違うと感じる。この姿勢こそが重要だし、溝は埋まらないとしても(実際本書の中でも溝が埋まらないところはある)、真摯に対話を続けることが重要で、民主主義はこういうところからしか生まれない、ということを感じさせる*3。そういう意味で、民主主義とはどうやって作られ、維持されるべきかについての示唆するところの多い本と感じた。まずは、自分事ととらえて、自分で考えたうえで、できる範囲の行動、まずは選挙への投票から、なのだろうが、それをすることが重要なんだと感じた。その点は、宇野先生の「民主主義とは何か」で民主主義を参加と責任のシステムと捉えていることとも符合するように思う。
個別の論点についての議論の中には、個人的には、理解不足や考慮不尽を感じさせるものがあり、直ちに賛成しがたいものがあった。とはいえ、上記の意味で示唆に富むので、個人的には読んでよかったと感じた一冊だった。