その記号の意味は

呟いたことを基に若干のメモ。

 

契約書の雛型などにある、各契約当事者を甲乙等の略称で表記するものについては、TL上での評判が良くない。雛型では仕方ないとしても、実際の契約書にする際には、そういう表記の仕方をせずとも、当事者名の略称(ABC株式会社であれば「ABC」とか)とか役割(売買契約書ならば「売主」「買主」)とか使えば足りるので、甲乙とか古式ゆかしい表記を取る理由はないように思われるうえ、特に長文の契約書だと、甲乙だけだと、いずれの側を指しているのか、分かりづらくなる、という側面があることもその理由と思われる。

 

個人的な経験では、かつて*1甲乙表記で、甲乙を取り違えたまま契約を締結して、そこから10年余気づかず、気づいたところで修正する覚書を取り交わしたという事例を見たことが有る*2。僕は、それ以来、自分自身が責任を持つドラフトの際には極力使わないようにしている*3。前記の事例ではなぜそういう事態が生じたかはわからないが、例えば義務または負担の押し付け合いとかをしたような事例では、甲乙表記では取り違えを誘発しやすくなる気がする。

 

もちろん、仮に取り違えていたとしても、特に日本法を準拠法とする契約書であれば、既に指摘が出ているように、当事者間での合理的な意思を解釈した結果として、妥当な結論を導ける確率は高いだろうとは思う。書面は、当事者間の合意内容を推認させる一手段に過ぎない以上、他の手段で内容の不備を補うことは認められて然るべきである。そういうことまで考えれば、甲乙を使っても実害が生じる確率が高いとはいえないだろう。とはいうものの、意図に反した記載となったことで、想定外の結果をもたらす危険を孕むようなドラフティングは可能な限り回避すべきと思うので、前記の考えには変わりはないのだが。

 

ちなみに、この話題との関連で、この種の事象は日本だけという指摘にも接したが、SECにfileされた契約書の実例などを見ることができるonecle.comで"Party A"で検索をしてみたところ、それなりの件数で契約書が出てくる(一例はこちら)ので、日本以外では一切見られないというとやや言い過ぎなのかもしれない。

*1:過去のどこの勤務先だったかは秘匿する...

*2:なお僕自身はいずれにも関与していない

*3:上の世代の先生にそういうドラフトを示したところ、甲乙表記に直されたこともあり、そういう時は、修正に異議を述べることはしていないが…。