BLJ 2020年10月号

配送の遅れもあって、月が変わってしまったが、いつものように、読んだところ*1についての感想メモを、いつものように呟いたことを基に箇条書きで(謎)。

  • 繰り返しになるけど、(ま)さん、お帰りなさい!
  • 二次妻無双御大の辛口レビューは、手厳しいけど、御大ならそう言うだろうな、というところだろう。改訂版への期待については同意。よく読むと対象書籍の版元disがあって、批判内容に同意しつつも、苦笑。
  • ハーレム教授の英文契約連載は、英米系の書式で見られる同語反復的な表現については、欧・日では、反復せずとも、解釈で補えるから、省略するというが、同じフォームを英米法系の準拠法下で使うのかどうかがわからず、何だか微妙な気がした。 
  • リコール対応の記事は、過剰対応をすることによる危険の指摘が興味深かった。
  • 長期連載化しているスルガ銀行の件の連載については、創業家のトップが管理部門に圧力をかけて牽制機能を無力化している様子が洒落にならない感じで、こういう会社には近づかないのが一番、万が一入ったとしても、速やかに脱出を計るべし、という以上の感想がなかった。
  • アジア法務の思考回路の記事は、単にクロスオーバーでDXの話をしているだけで、アジア特有の話がどこまであったのか疑問が残った。問題意識にはアジア特有の状況が反映されているようだが*2
  • 大屋先生の記事は、情報社会における脱モノ化を言う割に情報は記録媒体や情報の流通のためには、モノに依存せざるを得ない構造についての指摘に、納得。だからこそモノづくりを軽視すべきではないと思ったりもした。
  • 6月総会でのコロナ対応の総括の記事は、ネット上での開示を丹念に調べた労作だけど*3、こういうのをBLJでやるのが新鮮にも感じた。ただ、こういう統計調査は商事法務誌とかでやるだろうから、別にBLJでやらなくてもよくないか、という気もした。
  • 個人情報保護体制のグローバル化(以下略)の連載は、ポリシーの統一の面倒くささの一端が良くわかる。個人情報保護は各国の歴史(特に欧州)の反映している部分があって、安易に統一ができないから、仕方ないのだろうとは思うが。
  • 知識創造法務の記事は、企業存亡の危機を契機に作られたタスクフォースの事例が、そういう危機のないところで、どこまで一般化できるのか、疑問。
  • 表紙をめくってすぐのところのセミナーについては、こちらのところに届いたのは開催日より後だったし、今見ると、某参加者については、どうしても微妙な印象を禁じ得ない。
  • 今回は独禁法の特集。個人的には久しぶりに読みごたえを感じた気がした。菅久事務局長のインタビューは、「中の人」経験のある池田先生が聞き手となっていることで、読み応えのある記事に仕上がったように思う。個人的には、秘匿特権周りの議論のところには、そうなのかな、と疑問が残ったが。座談会は、往時のBLJらしさを感じる、これまた読み応えのあるものになっていた。池田先生の仕切り*4で、公取経験のある弁護士さんと企業のベテラン担当者の方々、白石先生という組み合わせで、生の事情を踏まえた議論が興味深い。白石先生が最後に連載の宣伝で締めるのは、なんというか…恐れ入りました、という感じがした。長澤先生の記事は、競争法を巡る最近の状況変化を踏まえて競争法コンプライアンスを見直すうえでの示唆に富んでいると感じた。個人的には、デジタルプラットフォーム事業者が消費者から利用目的を超えて個人情報を取得すること等が優越的地位の濫用にあたる理由の説明が明快でよかった。
  • 独禁法の道標では、優越的地位の濫用における優越的地位の有無の判断基準について、消費者取引への適用の有無や、取引開始時濫用を中心に、歴史的経緯も踏まえて論じられている。取引開始時の優越的地位の濫用という論点の混迷*5を切り分ける白石教授のコメントの切れ味は相変わらず鋭く感じる。「なお、私の経験では、「起こりそうにない」とされた問題は、だいたい、実際に起きている。」という指摘は上記問題に限らず示唆するところが多いように感じた。
  • EU競争法違反に基づく(以下略)の記事は、EU法に馴染みがないので、とっつきにくかった。裁判例の紹介が詳細すぎて*6、それらを踏まえた実務上の課題についての検討が舌足らずで、記事としてのバランスが今一つな気がした。

*1:全部の記事について感想をメモしているわけでもないことは付言しておく。

*2:事務所の宣伝臭もあって、ますます微妙に感じたのも事実

*3:著者が下にいる弁護士に調査の大半を下請けに出したのだろうとは思うが、仮にそうであったとしても、少なくとも手間がかかっていることには間違いはないだろう。

*4:この特集では池田先生は大活躍ですね。

*5:という言い方が適切かどうかは不明だが…

*6:翻訳のせいなのか、個人的には判旨の紹介の文章が読みづらかった。枝葉を落とす形で判旨紹介を短くすることはできたのではなかろうかという疑問が残った。