BLJ2020年7月号

例によって呟いたことを基に感想をメモ*1

  •  某二次妻・無双御大のレビューは、ネットでも話題だった某書。某分野の記載の誤りについての指摘はさすが(こちらも同じ本を読んだが、当該分野に疎かったので、指摘できなかった。無念。)。改正法の運用を踏まえた改訂版への期待は同意。その際には前記の誤りについての補正も期待したいところ。
  • ハーレム連載。M&Aのための一方開示のNDA*2の紛争解決手段に、裁判ではなく仲裁を選ぶ理由として、執行に関するNY条約のみが上がっているけど、裁判と異なり手続きを非公開にできることとか、仲裁人の選び方次第では論点に対する専門性を有する仲裁人が選任可能ということも指摘すべきだったのではないか。手続言語についても仲裁条項のレベルで決めておいた方が良いような気もする。NDAの内容からしても、開示される資料に記載されている言語と異なる言語を指定するメリットは多くないはずなので、そのあたりから自ずと決まってくるはずと思うので。
  • 知的財産法の羅針盤。建築物の著作物性を認めることの弊害についての中山先生のコメントが個人的には面白かった。確かに実用性の高い建物については、増改築が想定されるから、著作物性を認めると増改築に支障がでる危険があるというのは理解しやすいところ。
  • リコール対策の記事。そりゃそうなんだろうけど、という内容。サイレントチェンジ対策については、契約上4M変更について承認を要求するという手もあるなと。あと、買う側のコストダウンへの圧力がメーカー側にそういうことを促す要因になりかねない点をどう考えるのか、というところが気になった。
  • 賃料減免の記事には5/5執筆らしい。賃料不払解除について1,2か月程度の遅れでは解除されないとある。法務省民事局の3か月の不払いは解除にならないケースが多いというコメントが4月末までに出ていたことの整合性が気になる*3。また、テナントの自粛要請による休業がストレートに民法611条1項による減額につながるかは個人的にはやや疑問。結論としてはそうなるのが望ましいと思うけど、法的な強制力のないものであった点が引っ掛かった。
  • アジア法務の思考回路の記事は、時節柄いかにもな内容になっていて、記載は穏当なんだろうけど、他方で、なんでもデジタル化・データ化できるならいいけど、そうとも言い切れないところは残って、デジタル・データへの傾倒が、そういうところを盲点とする危険があるんだろうなという気がした。要するにリアルでの三現主義を忘れてはイカンという話に尽きてしまうのだろうけど。まあ、軽視されそうな気はする。
  • 山野目先生の記事は、民法は裁判規範と言い切っているあたりとか、現場レベルでの行動規範策定について無関心とも読めるあたりとか、それでいいのかという気もするが、他方で、実務への理解が不十分な学者に中途半端に口を出されないほうが実務的にマシなのかもという気もしてしまうので何だか微妙。
  • スルガ銀行不正融資事件の事例研究は、初回だけだと何とも。部外者の後知恵ならなんとでもいえるという印象が残るが。
  • 個人情報保護体制グローバル化の設計図の連載初回は総論として、各国の個人情報保護法制において存在することの多い概念・規制項目の一覧が興味深い。こういうまとめはマンパワーのある大手でないと作れないなと思ったりした。連載そのものにも期待。
  • 個人情報保護体制グローバル化の設計図の連載初回は総論として、各国の個人情報保護法制において存在することの多い概念・規制項目の一覧が興味深い。こういうまとめはマンパワーのある大手でないと作れないなと思ったりした。連載そのものにも期待。
  • スチュワードシップコードの記事は、この分野に対するこちらの勉強不足ゆえ、よくわからなかった。企業に対する働きかけが間接的なようだけど、それがどの程度企業に対して影響するのが見えない感じがぬぐえない。片仮名が多くて記事の内容が頭に入りづらい気もした。
  • コロナ対策の特集は、BLJらしく、企業の方の声を拾っているのは良いのだけど、第1波が収束しつつあるところでは、この内容の特集をするタイミングとしてはイマイチかなという印象が残った。他誌がwebとかを上手く使って速報をしていたのに、BLJではそういう動きが見られなかったのは残念。そういうの一番しそうな気がしたのだが、単純にリソースがなかったからなのだろう。

*1:amazonへのリンクは貼れなかったので、後で補充するかも。

*2:このネタまだやるのかと思ったのは内緒

*3:ここは本来は編集部段階で気づけると良かったのではなかろうか。