「現場」経験の積み方についてのメモ

呟いたことに基づくメモ。以前同じことを書いたかもしれないが、そうだとしてもご容赦のほどを。例によって、こちらの元「中の人」としての体感に基づくものであり、限られた経験に基づくものなので、当然ながら、異なる意見があり得ることを付言しておく。

 

メーカーとかにおいて生産なり営業の「現場」経験というのが、法務部門で勤務するうえで、有用ということはあると感じている。利益の源泉はこれら「現場」にあって、いくらおためごかしをしたところで、「現場」で稼いだ金で管理部門の人員の給与が払われている*1ことを実感する意味では「現場」に身を置くのが望ましいと思われる。「現場」から管理部門、本社部門がどう見えるか、ということについての本音・肌感覚を知っておくことは、法務部門で働くうえでも有用だろう。それと、「現場」を知らないで本社法務部門一筋だと、一定確率で、「現場」を見下すような勘違いする人間が出るので、それを防ぐ効用も得られる*2

 

こうした経験は、汎用性がないように見えるかもしれないが、必ずしもそうではないというのがこちらの感覚。僕は、初職では、最初の4.5年が各1.5年、内勤・営業・生産現場という設定で地方支店に配属だったが、諸般の事情で支店で内勤3.5年、残り2つを各半年やって、本社法務に配属だった。内勤以外の経験値の少ないのはマイナスだったが、ゼロでなかったことは、転職後も含め有用だった*3。もちろん、そういう経験を活かすには若干の想像力は必要だが。

 

他方で、キャリアの断絶というようなことを気にする場合もあるだろう。「現場」で戦力になればなるほど、法律に関しての情報のキャッチアップはしづらくなるだろうから*4。そういう意味では、特に新卒一括採用の場合は、最初に入った時点で、まずは「現場」を経験してもらってから、というのが良いのだろう。そういう形の方が、「現場」側も来た人間を「お客様」扱いせずに済むのではないかと感じる。「お客様」意識だと、「現場」側も当人にとっても、得られるものが少なくなるように思われる。

 

また、どのくらいの期間配属するかという点については、期限を切ると配属された人間に「腰掛」気分が生じて、実が上がらなくなる懸念はあるが、他方で、周囲と合わないときには救いにもなるので、なかなか悩ましいかもしれない。年中行事があることと、「現場」に何のメリットもない配属も厳しいと思われることからすれば、配属期間は2年(1年目は期待せず、2年目は少しは役に立って、貢献できるか)としてはどうかと、という気がした。

 

そういえば、ニトリが現場と法務を行ったり来たりさせるという話が、以前BLJで書いてあったのを記憶しているが、ある意味凄いと感じる。自分がしたいとは思わないものの、需要に応じた法務人員の増減もしやすいのかもしれないし、現場に法務の知識のある人間がある程度いきわたるというのは、予防法務という側面で見ると、効果の高いことのようにも思われるので。

*1:だからといって卑下する必要はない。稼いだ金を効率的に使うために管理部門は働いているのだから

*2:付随的かもしれないが、同じ「現場」で一緒に働いた方々にとっては、法務に対する心理的敷居を下げる効果もあると思われる。

*3:もっとも僕自身は、周囲に溶け込めずに当時はものすごく苦痛だったし、現場にとって「お荷物」だったことを付言しておく。

*4:「現場」の方が面白くなってそちらのキャリアを取るというのも、個人の選択としてはあり得るだろうが…。