弁護のゴールデンルール / Keith Evans (原著), 高野 隆 (翻訳)

TL上で複数の先生が薦めておられたので、読もうと思って探すと、何故か見つからない、という状態がしばらく続いていた。しかし、本日某所で見つけて購入した。コンパクトにまとめられていることもあり一気に読んでしまった。感想をメモしてみる。民事刑事問わず法廷弁護をする際には必読・必携の書だろう。僕も折に触れて読み返すと思う。

 

練達のバリスター(法廷弁護士)の著者が、法廷で弁護士が弁護活動をするうえで身につけるべき弁護術について、具体的に記していて、弁護技術の要点を80余りのルールにまとめて示している。具体的なエピソード(弁護の失敗例も含む)もふんだんに添えられていることや、著者の熱意が伝わってくることもあって、読んでいて退屈することもなく、一気に読めた。

 

興味深いのは、著者が弁護術について、普通の法廷弁護士*1が多少の努力を続けるならば容易に習得可能であるとしている点。その主張が真なのか、僕はまだ十分な判断ができる状況にはないように感じるが、書かれている内容が、およそ超人でなければできそうにないものとも見えないのは確か。

 

とはいえ、著者が、これらについて大多数の弁護士ができていない、としているのは、容易に見えている割にはやってみると実際には何らかの理由で難しいということなのかもしれない。そのいくばくかはそもそもそういうルール自体が知られていない、ということに起因するのかもしれないが。

 

海外の話なので、日本でどこまで応用可能か、という点については、内容を見る限り、ルールとされるものは、人間の心理に対する洞察に根差したものなので、洋の東西を問わない部分が多いようのではないかと感じた。民事刑事問わず使えるところは多いのではないかと感じた。この点、訳者の高野先生*2が、制度の仕組みや運用の差異に対応するべく若干の修正を加えつつも、実践をされている。これらの点については、訳者あとがきに記載があるが、記載の時点から20年以上経過して裁判員裁判が本格化していることもあり、修正の度合いは減っているのかもしれない。また、この本以降、この本にあるような内容は、高野先生の本などを通じて、特に刑事弁護の分野では広まっているものと思われる。

 

いずれにしても、僕自身にとっては、必携と感じたし、特に尋問準備の前には読み返すべき本と感じた。

*1:著者がイギリスのバリスターでソリシターとの区別のある国の弁護士だからこういう書き方になると思われる。日本では、単に弁護士と読めば足りるだろう。

*2:某映画監督に似ている。修習中にお姿をみかけたことがあったが確かにそう感じた。