まずはじめに

本エントリは#裏legalAC(https://adventar.org/calendars/4025)の一環として投稿されております。それにしても「裏」とか意味が分かるようで分らんですな(汗)。まあ、盛り上がるのは結構なことで。とりあえずハンバーグは作れません(謎汗)。

 

さて、今回のネタはどうしたものかと悩んだのですが、そろそろ二回試験の結果も発表になって、72期の方々が実務に出る*1ということもあり、ある程度の年数企業の法務機能部署(詳細は後述)にいたオジサン*2として、インハウスに限らず、これから企業内で法務機能部署で働き始めるであろう方々に向けて、ある意味で当然と思われるいくつかの事柄を書いてみようかと。当然すぎて明示的に語られることが少ないような気がするので。以前書いたことがあるような気もする内容ですが、ずいぶん前のことのはずなので、その点はひとつご容赦を。

 

 

まず、あらかじめここでいう法務機能部署というのを定義しておくと、企業活動を法的な見地からサポートする部署、としておきたいと思う*3。一番ざっくりした定義だとは思うけど。この意味での法務機能は、明示的であれ、黙示的であれ(何も考えずにスルーするというのも含めれば、だけど)、社内で何らかの形で誰かが果たしていると思われる。

 

そのうえで、いくつかのことを。

 

まず、上記の意味での法務機能部署は、企業内には、複数存在し得るし、それがどういう名称かも企業による。企業内で、各部署にいかなる機能を担わせるかについては、特段の決まりがあるわけではないから、このような事態が生じうる。また、特定の機能について、法律という側面から見るのか、それ以外の側面を見るのか、という切り口の違いによっても、機能の割り振り方が異なってくることが考えられる。そして、一つの機能を複数の部署でサポートするということも想定可能である。(追記:thanks to タンザニアネコさん なお、これらの機能をその部署の他の業務の片手間にやるという場合も存在する。兼業法務ともいうべき事例も存在しうる。)

例えば、債権回収という機能について見ても、自社の権利の実現の確保という意味では法務といわれる部署(それが部であれ、課であれ、それ以外であれ)に担わせることも想定できるが、お金の出入りに関するものとみれば、日々のお金の出入りを見ているであろう経理に、顧客からお金をもらうという意味では営業に、ということが考えられると思われる。

同様に人事労務系の問題は、広義の労働法という切り口で考えれば法務機能だろうが、労働者対会社の問題として人事が担うことが多いのではないかと考える。

また、知財については、確保した権利の行使という観点から法務機能の一部と理解されることもある反面、権利化側に重点をおくと、研究開発部門の一部と理解されることがあると考える。

 

そして、そうしたそれぞれの特定の機能を担う部署が本社機能にあるか、事業部門にあるかは企業ごとに異なる。これまた、いずれに置くべきかの決まりがないからそういうことになる。この点は、先般のこちらのエントリの契機となった経営法友会のレポートでも話題になったが、一長一短があるように思う。

 

こうしたことの裏返しとして「法務」という名前を冠した部署が、社内で複数存在しうるし、その部署がその社内でいかなる機能を担っているかも、個社の状況次第で変わることになる。この辺は、個社ごとに「法務」という名前を冠した部署がいかにしてできたかという歴史的経緯も絡んでくることがある。

個人的に経験した範囲でも、1社目では「法務部」というところは1か所しかなく、本社の管理部門だったが、許認可関係及び社長印管理のチームと、係争対応及び法律相談対応のチームに分かれ、僕は後者にいた。契約書の内容審査は事業部門の契約担当者が担っていたし、しかも、海外案件は、大人の事情(謎)により、本社法務部はタッチしなくなり、海外部門内でほぼ完結していた(僕は、本社法務部での勤務の後に海外部門内の法務に留学含みで異動となった)。2社目では、本社法務部に一極集中していて、法務部門内で事業部ごとの担当チームに分かれて、そのチームで、海外・国内問わずすべて、契約書審査も含めあらゆる問題(知財は別部門だったが)をサポートしていた。3社目では、持株会社制で、僕の本籍?は日本の事業会社の法務(なぜか片仮名でリーガルという部署名だったが)の責任者だったが、持株会社側に法務担当がおらず、大人の事情(謎)により僕だけが兼務で持株会社側の法務もサポートし、契約書審査もサポートしていた(知財は別部門だった。輸出管理も別だったが、そこの責任者は僕が兼務していた)。4社目は外資だったので、地域としては国内の案件のみの担当で、知財は部門内で別のチームが担当だった。

 

なので、自分が配属された部署の名称が「法務」とついていなくても、直ちに上記の意味での法務機能部門ではない、ということにはならないということは留意しておいて損はないと思う。

また、仮に法務機能を担わない部署(仮に事業部門といっておこう)であったとしても、法律の知見が生きることはある。この点はChihiroさんの先日のエントリにの記載が参考になると思われる。そうした部署での知見・経験は、その後に法務機能部署に異動になった際にも活きることになる。事業部門側からすれば、同じ部門にいたことのある人間には相談しやすいということもあろうし、事業部門側の意向を理解しやすい等のメリットの活かし方もあろう。

 

ともあれ、そんなこんなで、法律の知見は企業内では色んな形で生きるので、どういう部署に行くことになっても、活かし方を見つけていただければ思う次第。

 

ということで、次は@hrgr_Ktaさんです。宜しくお願い致します!

 

*1:ということは我々も1年目ではなくなるということなんだよな…(汗)

*2:でも書いたが、こちらの経歴はこんな感じ。1社目。新卒で入ってまず関西で勤務、5年目から本社法務部門→4.5年国内法務をしたあと海外法務に留学含みで異動→2年東京で海外法務と並行して留学準備(この過程でblogを始めた)→サマースクール込みで1年間ボストン。LLM@Boston U.修了→シンガポールで海外法務を1年して転職→2社目。東京で日系メーカーで法務2.5年、この間にNYBarに合格してNY州弁護士登録→3社目。東京の日系メーカーで法務2年→4社目。東京で米系メーカーで法務5年9か月。働きながら司法試験に合格までこぎつける→退職して司法修習→今年から東京エリアの弁護士事務所(主に企業法務系の事務所)でイソ弁(イマココ)

*3:某報告書とか脳裏をよぎるかもしれないが、その辺については、以下で書きたいことと直接関わらないよう気がしているので、略。