避けられているかもしれない予感

例によって呟いたことを基にメモ。BGMはこちら(謎)。

 

企業内の法務部門(その名称は問わない)が一生懸命仕事をしたときに、時として生じる副作用として、法務回避という現象があると認識している。過去の勤務先において、某重厚長大系メーカーとの某契約書に関するやり取りの中で、覚書であれば法務を通さずに済むから、覚書という形にしてくれというリクエストを受けたことがあった*1。法務を通すと面倒になるから、というのは一定程度の確率で生じると思われるし、それは、会社が大企業であれば存在しないという話ではないかと。事業部門から見て、有意な差異が生じていない契約文言をめぐるやり取りとかをしてしまうと、その種の現象が生じやすくなるのではないかという気がする*2

 

個人的に怖いと感じるのは、事業部門がそう思っている可能性にかの会社の法務が気づいていない可能性があること。可能性を認識していないと対策の講じようがないから、事態が改善することは望みがたいと感じる。

 

こういうことが生じるのを防ぐためには、どうするか。事業部門からどう見られていそうかということについての発想が不足しているというのが、一因と思われる。そういう意味で、企業での事業部門経験のない、外から来た(または新卒で法務一筋の)インハウスだけで作られる法務を作ってしまうとこうした弱点を抱える可能性があるのではないかという気がする。そこで、一つ考えられるのが、事業部門との人的な交流を通じて、事業部門から法務がどう見えているかを部署内で意識するようにすることなのかもしれないが、これはこれで簡単ではない*3

 

寧ろ新人のうちに、事業部門(メーカーなら生産現場も含め)経験を一度させてから法務へ、という方がよいのかもしれない。事務系も一度は全員事業部門へ、という新人研修の在り方はその意味で適切なのだろう。この点で、一見すると法務と関係のなさそうな新人研修をフルに受けさせることで、退職リスクがあるのではないかという指摘にも接したが、その程度で辞めるなら、遠からずやめるだろうと割り切るのも一案と考える。個人的な転職経験(日本法上は無資格時代だが)からすれば、そういう「現場」経験、具体的には、事業部門にいる人たちが何を感じているかについての肌感覚を学ぶことや、「同じ釜の飯を食べた」感覚を持ってもらって、何かあった時には連絡がもらえる関係性を築くことは、社内でも、その会社から離れても、有用と感じるのだが*4、実際に体験した人間以外には理解しづらい気がする。そのレベルまでの体験を得るには新人研修として一通りの経験をしてもらうのが重要と感じるのだが...。

 

 

 

*1:社内規則上法務を通すべき内容でありながら、ここで書いたような手段で、そのプロセスを回避できてしまうのは、それ自体内部統制などの関係で疑義があり、内部監査等でそうした行為が検知されないのも問題ではあるが、その点は横に措く。

*2:この辺りは事業部門側への説明の仕方の問題で回避できる部分もないわけではないと思うが、それもここでは横に措く。

*3:この辺りについてこちらの感じることは以前エントリにメモした。

*4:事業部門で何が起きるかというのはある程度汎用性があるということを示しているものと考える。