中から外へ

本エントリは、法務系Advent Calendar 2019 #legalACの一環として投稿したものです。

 

毎年恒例と言っても良い(と思っているのだが…)、本企画。一応ここまで皆勤賞ではあるはずだが、こちらなりに、ではあるが、何を書くかは悩むところ。悩んだ結果、書き始めたけど没にしたネタもいくつか*1

 

今回は、日本の弁護士登録をしてから1年近くたったので、今まで企業の法務の担当者をしていたところから、修習を経て、弁護士事務所で働くようになったという経過を踏まえての、現時点での若干の感想を、気まずくならない範囲で書いてみようかと。こういうネタなら多分誰ともかぶらないだろうし*2*3。書いてみると、当たり前のことしか書いていないのだが、そこはまあ、ご容赦ください(汗)。

 

さて、企業の中の法務担当者として、それなりの期間働いてきて、その過程では、弁護士さんに仕事をお願いする依頼者の側だったわけだけど、そこから、諸々の巡りあわせの結果、逆に依頼を受けて仕事をする側(イソ弁)に回ることと相成った。

 

まず感じたのは、依頼者側で何が起きているのかは見えないということ。確かに、自分が依頼者側だったときのことを思い返すと、依頼する業務に必要と思われる範囲は、なるべく広めに説明はしていたものの、それ以上はあまり説明しなかった。聞いていただいても、直接役に立つ話でもないので、時間を無駄にしても、と思った*4からで、それからすればある意味で当然なのだけど。もちろん、依頼を受ける側としては、必要と判断した範囲については、調べて分からなければ質問するようにはしているし(とはいえ、流石に依頼者も暇ではないことは推察できるので、聞く内容は限定的になりがち)、別にそれで何かの不具合が生じたわけではないのだけど、思っていた以上に見えないもんだなと改めて感じたのは確か。

もっとも、これは、こちらがまだ今の事務所で執務を開始したから日が浅く、依頼者の方とのお付き合いも短いこと故のことかもしれない。過去の勤務先における顧問の先生方は、長いお付き合いの先生方の中には、こちらの内情も相当詳しく把握されていた方もいたので*5

 

また、依頼を受ける側に回ると、自分が依頼者だったときのこと、特に最初の頃のあれこれを思い出す。出来が良くなかったこちらのせいで、諸先生方にはご迷惑をおかけしていたことを改めて思い出して、頭が痛くなる。壮大なブーメランが戻ってきて刺さったというところだろうか。

 

次に、当然のことではあるが、弁護士はサービス業ということも再認識した。ご依頼の内容に?と思うことがあっても、ストレートにその旨を表現してよいかどうかというと、そうとは限らない。外の人間が、弁護士の看板を背負って言う 、ということは、中で法務担当者が言うのとは意味合いが異なる場合がある。なので、コメントを返す場合には、これまでとは気の使い方が異なっている*6。気の使い方が異なる場面は他にもあるが、(以下略)。

 

もう一つ。これまた当たり前だが、日々是勉強というところ。特定の業種向けのブティックファーム(そういうところがあるかどうかは知らないけど)にいるわけでもないので、色々な業種の依頼者の方から、色々なお話が来るわけで、そうなると、今まで知らなかったようなビジネスや法規制について調べないといけないことも出てくる(法律について見ても、特定業種に対する規制法とかは、その業種の依頼者がいなければ知らないのが通常だろうし)。それが想定していた以上に広範かつ頻度が高いというところ。大変ではあるが、興味深いのも事実。こうした結果として、一企業にいるよりも見えてくる範囲は広くなるということも感じた。こちらは、転職のたびに業種は変えていたが、それでもなお、というところ。

 

最後に、これまた当然のことかもしれないが、訴訟はあまり効率的とは思えない、ということ。原告・被告双方の立場で訴訟案件もやらせていただくが、どうしても事実関係の確認には時間も手間もかかる*7。訴訟が存在することによって生じる手間というのもそれとは別に存在する。言うまでもなく、こちらの報酬も発生する。その割に費用対効果については、予測できない部分が残るから、良いとは言いにくい。そう考えると効率的とは言いにくいように思う*8

もともと企業にいたときから、中での手間を考えると、訴訟になったら、ある意味「負け」と思ってきたけど、外の立場になってさらにそう思うようになった。そういう意味では、予防的な側面が重要になるとの思いを新たにしている次第。

 

...ということで(謎)、次は、アーリーさんなのでありました。宜しくお願いします!

*1:掟破り?ので使うかどうかはまだ決めていない。おそらく別のネタにすると思うけど…

*2:このネタは、ある意味当然ながら、一番最初に思い付きはした。しかし、気まずくなるような気がして、一旦没にした。その後、色々考えなおした結果、気まずくならない範囲で書いても意味があるだろうと思ったので、気を取り直して書くことにした次第。なので、記載については、書ける範囲(裏を返せば…(以下略))と考えられる範囲でしか書いていないことにご留意いただければ幸甚です。

*3:こちらのブログをはじめて読まれる方もおられると思うので、念のため注記しておくと、書ける範囲でのこちらの経過は概略次のとおり。1社目。新卒で入ってまず関西で勤務、5年目から本社法務部門→4.5年国内法務をしたあと海外法務に留学含みで異動→2年東京で海外法務と並行して留学準備(この過程でblogを始めた)→サマースクール込みで1年間ボストン。LLM@Boston U.修了→シンガポールで海外法務を1年して転職→2社目。東京で日系メーカーで法務2.5年、この間にNYBarに合格してNY州弁護士登録→3社目。東京の日系メーカーで法務2年→4社目。東京で米系メーカーで法務5年9か月。働きながら司法試験に合格までこぎつける→退職して司法修習→今年から東京エリアの弁護士事務所(主に企業法務系の事務所)でイソ弁(イマココ)

*4:タイムチャージの場合は特に...

*5:もちろん今と昔は違うので、そのようなお付き合いの仕方が可能となるかどうかは、また別の話だろう

*6:流石に具体例は挙げたくても無理です(汗)

*7:IT化とかで何とかなるという話ではない。期日外で行う準備の手間が問題なので。また、第三者を交えた手続自体を利用することそれ自体に起因する話なので、ADRとかの利用だったら良いという話でもない。

*8:もちろん、効率性だけが判断基準というわけでもないから、訴訟自体を否定するものではない。