特定の事案に端を発して考えたことではあるが,敢えて一般化した形で,素人考えをメモしてみる*1。
法令違反等*2の事態が生じて,それが企業内の法務機能*3による抑止が働いていなかったために生じた場合の対処法を,素人なりに考えてみた。
この場合,問題となった結果が生じた原因について,大きく分けて,いくつかの類型があるような気がする。そしてその類型ごとに再発防止のために講じるべき対応策が異なるのではないかという気がした。それ故に,どの類型に属している事案なのかの分析が欠如ないし不十分だと,対応策の実効性に疑念が生じることになると思われる。
考えられる1つ目の類型は,そもそも抑止役になる法務機能が存在して居ない,または,仮に存在しても当該事業部門に管轄が及んでいない場合。法務機能を車のブレーキに例えると*4,そもそもブレーキがない場合ということになろう。部署間の連携が悪い場合も含まれるのだろう。この場合の対応策は組織論的なアプローチと言うか,機能を設け,当該機能の管轄を及ぼし、連携を強化することで対応することになろう。
2つ目は,機能は存在しても,その機能を発揮できるだけの能力が当該機能を所轄する部署にない場合。業務量が,人員に対して多すぎる,人員の能力が不十分,情報が入ってきても適時に対応できない,等の状態が生じている場合。車で例えれば,ブレーキはあるけど,その利きが悪いような場合,ということになるのだろうか。この場合の対応法は,人的な資源の投入または当該機能を担う人員の知識面・法的な思考能力の向上等の教育ということになるのだろう。
問題なのは3つ目で,上記2つが整っていても,法務機能を担う人員が,問題の事案を問題と認識せず,または,認識できなかった結果,問題が見過ごされたままになる場合。車で例えれば,利きの良いブレーキはあるけど,そもそもブレーキを踏まないといけないと思っていなかったというような場合,という感じ。2つ目と截然と区別できるかは自信があるわけではないが,いずれにしても,こういう場合は,企業文化とかの問題もあるので,人員の考え方,社内の「空気」,社内文化が問題の根底にあるので,2つ目の類型よりも対応が難しく,時間がかかるのではないかという気がしている。
無理に上記のように分けて考えてみたとして,この3つは相互に排他的ではないと思われるので,前2者のいずれかまたは両方のみが問題と考えてしまって,3つ目への対応策が不十分になってしまわないかということが,昨今の某事案への当該事案を生じさせた企業の対応策を見ていて気になった次第。