対応する限界について

何のことやら。呟いたことに基づく雑駁なメモ。

例によって個人的な体感に基づくものなので、異論などがあり得るのは言うまでもない。なお、以下では所謂JTCの製造部門のあるメーカーを前提にする。

 

企業内法務*1といっても、ありとあらゆる法分野を所管するとは限らない。メーカーだと、分かりやすい例を挙げれば、製造工程に影響する法令に関するものなどは、条文だけ見てもどうにもならないので、現場で対応してもらうしかない。企業内法務で出来るのは、せいぜい関連する条文の読み方とかがサポートできる程度ではないか。

結局、その種の法令に適切に対応するうえでは、製造のメカニズムと工程の詳細な知識が必須で(場合によっては、製品の作用機序についての知識もいるだろう)、そうした知識がないと、仮に関係する法令の適用の結果として法令遵守に関する疑義が判明しても、疑義に対応するための対応策が提案できない。対応策の提案なしに問題点だけ指摘するのは有害無益になりかねない。そして、そうした知識を習得するには、理系の知識、場合によっては高校の物理化学生物の知識からやり直す必要がある。そういうことと法務の知識のキャッチアップを並行するのには有限の時間を前提にすると無理がある。そうなると、その辺りは現場の技術屋さんに法令の読み方を理解してもらう方が効率的ということになり、法務が所管するということにはならないだろう。特に、法務の声が社内で重要視されているところで、法務が中途半端なことを言うと却って混乱する可能性があるし、生半可な努力ではまともなことは言えないので、そうした努力をするなら他のことに振り向ける方が適切であろう。

こうした見方に対して、企業内法務である以上、この辺りの知識まで法務は理解しなければならないという意見にも接したことはあるが、身に着けるのに大変だし、どこまでポータビリティがあるかは不明確に見えるので、法務の流動性を前提にすると、どこまで突っ込むかは立ち位置次第で考えが別れるところだろう*2。その会社で新卒から最後まで行くという腹の括りをしているなら、頑張るのも一つの選択肢かもしれない。個人的には、そうしたところに頑張るよりも、既に指摘が出ているように、自分に分かること分からないことを仕分けして、後者については、問いを現場に投げかける形の対応をするのが良いと感じている。そうした形はとれるので。

*1:機能としてのそれを言い、部署名を問わない。以下同じ。

*2:言っていた人間は生え抜きだった。