誰がために

呟いたことを基に雑駁なメモ。前にも似たようなことを書いた気がするが、それはさておき...。

 

資料を送っておくと、こちらが寝ている間にパワーポイントの資料を仕上げてくれるというサービスの話に接した。あわせて、当該サービスを利用していると思しき方が、大要、自身は大企業にいてその種のサービスを使っている旨、及び、当該サービスの利用に際してはNDAを所属先の法務が見ているはずである旨の呟きをされているのにも接した*1

 

既に指摘がなされているように、この種の状態がある意味で一番危険であると感じる。利用者がNDAの締結の有無及び締結されている場合のNDAの保護の範囲、保護を受けるための条件、NDA締結により課される制約について、何も知らないまま、秘密情報を含む可能性のある情報を、無邪気に外部の第三者に送っているように見えるからである。万が一資料作成業者に対して送った資料の中に、自社の秘密情報が含まれていたらどうなるのか、他社からNDAの下で開示を受けた他社の重要情報が含まれていたらどうなるのか、というようなことに、何ら思い至っていないように見えてしまう。

 

目先の便利さに重きをおきすぎると斯様な事態は容易に生じうる。そのような事態を防ぐためには、まずは教育だろう*2。自分の行っている行為が、当人の意図とは別に、傍目から見たときに如何なる意味を持ちうるか、思いを致す必要性を教えることが、情報セキュリティ教育に加えて必要なのだろう。そのためには、契約書の内容について、当該契約を利用する、契約内容に基づいて行動をする人間に、しっかりと理解させるべきであり、契約書の内容を法務任せにさせてはいけないと感じる。

 

時折、契約書は裁判規範であり、裁判またはADRの場で自社に有利に機能するようにすることを優先すべきという言説に接するが、そのような命題は常に成り立つものではなく、寧ろ原則としては、当該契約に基づき行動する方々のための行為規範であるべきで、そのためにはその内容の周知徹底も必要なのではないかと考える。揉めたときの扱いを優先できるのは、寧ろ例外と感じる。

 

 

*1:前記のサービスおよび利用者とされる方を批難する意図はないのでリンクなどはしない。

*2:ハードウエア的な防護策、例えば自社のメールサーバーから出るメールの添付ファイルにconfidentialなどの文字が含まれている場合には一定のアラートを出す、などの対応は考え得るが、それだけに頼るのは賢明な気がしない。その種の手立ては二次的なものとすべきと考える。