破産から新民法がみえる /小林 秀之 (著)

 

司法試験の選択科目は経済法だったこともあり,今まで,破産法をきちんと勉強したことがないまま,ここまで来たものの*1,弁護士として破産周りの話にも直面することもあり,破産法そのものの入門書としては,ここから入ってみようかと思って買ってみた。司法試験の民訴もこの著者の書籍から入ったこともあり*2,とっつきやすいかなと考えたので。

 

平時に民法で規律される関係が,主体の支払不能などの非常時には破産法で規律されることになるわけで,その意味で,両者は密接な関係にあるということも可能で,本書は,その関連性を踏まえて,両者を比較しつつ,両方の理解を深めることも狙いとしている。多少は知識があるはず*3民法との関連性から破産法を理解しようという発想は,僕にとっては破産法の取っ付きにくさを和らげる形になったと思う。

 

また,設例を基に解説をする形も,問題の所在を理解しやすくする意味では,有用と感じた。全体としては,重厚になりすぎず,読み切れる分量で破産法の鳥瞰をしてくれている(最初に破産手続の全体像を抑えているのもその意味でも有用)ので,こちらの用途との関係では有用と感じた。

 

一つだけ改善してほしい点をあげれば,入門書については,以前から僕は書いていることではあるが,この先に読むべき本の案内がほしいと思う。もちろん,実務で紐解くべき本としては定番書があることは,個人的には理解ははしているが,司法試験・予備試験受験生の方とかが読むことも想定される以上,そういう方々向けという意味も含めて何らかの紹介があって然るべきと思ったので。

 

*1:企業法務の担当者としては,倒産周りの案件に関わった経験があまりなく,都度断片的な知識で対応してきた感がある…

*2:その後和田民訴に乗り換えはしたが…

*3:債権法改正後の民法についてどこまで理解できているかはさておき…(汗)