そのことの意味は

昨日呟いたことを整理してみようかと。

きっかけは,戦士さんのこちらのエントリ。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

 

良著を的確に,そして,熱く紹介する意味で,信頼できる読み手の一人*1である,戦士さんがここまで書くのだから,ということもあって,普段読まないジュリストを買ってみた。

 

読んでみると,確かに戦士さんが的確に紹介されているように,特に企業法務に縁遠い方々に向けて,ジュリストという法律雑誌の「王道」ともいうべき雑誌に,企業法務の現場の様子が伝わる感じで紹介がなされていることには,熱く紹介するに値するだけの価値は十分にあると思う。その意味では,ご紹介いただいたことに心より感謝申し上げる次第。

 

とはいうものの,他方で,企業の法務部門でそれなりに長く席をおいた者としては,色々と思うことがあるのも事実*2

 

そもそも語られていること,特に,この手の話題になると,登場する確率の相当高い北島さんのご発言は,ある程度,情報に接していれば,特段新味を感じさせる内容はなかったし*3,片岡さんについても,もっと語ってもらうべきことがあったのではないかというふうには感じた*4。奥村先生の仕切りは見事だったけど,無難すぎるという気もしたのが,正直なところ。

 

語られている内容についても,キラキラしすぎている割に,そのキラキラの裏側に潜むものを無視しすぎていないかというところもあった。鼎談のお三方のおられたような錚々たる企業だけが,企業法務をしているわけではない。そういう意味でそもそもキラキラしすぎていると思うのに,たとえ世間的には有名だったり立派だったりする企業でも,法務部員(資格の有無は問わない)の処遇,特に上司がどういう経歴の人にあたるか,その当たり・ハズレが何をもたらすのか,どこまでの教育を受けられるのか,企業内での人事異動のリスク(法務とは無縁の部署に配属されることのもたらす危険)とかそういう当たりの話が出てこないのは,いいのかなという気がした。

 

こういう話を,現場での実務に縁遠い方に最初からするのが適切ではないのかもしれない。とはいえ,王道の雑誌で紹介するのであれば,光も影もしっかりと紹介してほしかったとは思った次第*5。元「中の人」としては,光も影も認識した上で,この分野に入ってほしいと感じるので。

*1:信頼できるという意味では,某無双様 と双璧というのが,こちらの印象

*2:それもあって,戦士さんと無双様の会話に乱入してお二方にはご迷惑をおかけしました。失礼しましたm(_ _)m

*3:そもそもいつまでも北島さんなのか,というところも疑問。もちろん,無資格の法務担当者から経営トップまで上り詰めたという意味では,余人をもって代えがたいし,企業法務の「顔役」としての啓蒙活動に熱心であり,語るべきことを的確に語られるあたりも含めて,敬意を表するべきであることも重々認識している。しかし…と思うのである。

*4:例えば,カリスマ経営者の存在がもたらす法的リスクとか,そういう経営者の下にいる法務部門の定着率とか…

*5:この意味で,無双様が,編集部がコンフォートゾーンから,出ていない,という趣旨の指摘をされていたのに賛成するところ。往時のBLJのような攻めっぷりを期待するのは,流石に無理があるのかもしれないが