それをする意味は

前に書こうと思って書き忘れた*1ことを思い出したのでメモ。

 

企業法務系の事務所にいることもあり、刑事事件は普段やらないのだけど、ある程度はやっておいた方がいいとこちらのボスは言うし、それはそうだろうな、とこちらのここまでの経験でも思う*2

 

なぜか。単純な話で、インハウスであれ、企業法務系の事務所であれ、そういう立ち位置にいるから刑事事件に無縁とは限らないから、である*3。勤務先であれ依頼者であれ、企業またはその役職員が刑事事件の被疑者になることは、一応考えられるし、それは、純粋な刑法典上の話に限らず、いわゆる特別刑法といわれる分野まで含めれば、あり得る話なのではないかと思う*4。いわゆるホワイトカラークライム、と呼ばれる贈収賄のような犯罪や、談合のようなもの、を考えれば、企業及びその役職員が、心ならずも(であってほしい)、手を染める可能性があることは、それほど理解しづらいことではあるまい。

 

仮に、その種の事態が生じていることが発覚したとすると、もちろん、状況が許せば、刑事の専門家の弁護士さんに対応をお願いすることを考えるべきなのだろう。自分が普段扱っていなければなおのこと。とはいえ、そういうことをする場合であっても、そういう専門の先生につなぐまでの間に生じる事態の進展に対しては、自分が対応しなければならないということはあるだろうし、刑事事件そのものの対応は他の専門家の先生にお任せするとしても、付随する民事的な対応、例えば、取締役が逮捕され、犯罪の成立につき争いのないような場合に、その後の内部的な措置(例えば、取締役の交代とか)などについて対応する必要が出てくるかもしれない。そういう場合に、刑事系の事件の対応やその見通し方法についてまったくわからないとなると、対応もしづらくなろう。

 

そういうことを考えると、自分の本来業務ではないからと言って、避けて通ろうと考えること自体悪いことではない*5が、そこには一定の弊害があると感じた次第。

 

少なくとも修習生の方々におかれては、修習後は刑事事件に全力で取り組むのが難しい状況になることもあり得るということを踏まえて、全力で取り組んでほしいと感じる次第*6

 

*1:こちらのエントリを書いた際に書こうと思っていたのだが、なぜか書き漏らした。万が一過去に同じことを書いていたとしたら、ご容赦願いたい。

*2:状況が許せば、ある程度、という意味であり、必須という意味ではない。念のため。

*3:その意味で、修習後にこれらのところに行くことをもって、修習時に刑事事件に真面目に取り組まないのは、近視眼的すぎて、もったいないと思う

*4:僕自身の関与の度合いはさておき、かつての勤務先がその種の事件に巻き込まれた経験はないではない

*5:特に熱意もないような場合は、被疑者/被告人に害をもたらす危険もあるのも事実だろうし、刑事事件は時間のかかり方が民事案件とは大きく異なるので、自分の普段の業務を「守る」意味では、刑事事件に消極的になったとしてもやむを得ないのではないかと感じるところ。

*6:以上の点は、修習時点でも頭でわかっていたけど、今振り返ると、十分にできなかったという自分の反省でもあるのだが...そういう意味で、73期向けのメモでもあったりする(読む人がどれくらいいるのかは不明だけど)