危機管理広報の本2冊

某社の某事件を見ていて,危機管理広報の本でも読むかと思って,本屋で2冊ほど買ってみたので,感想をメモ。どちらも,切羽詰ったときに読む本ということを念頭において書かれているためか,端的で,読みやすかったことを,まず最初にメモしておく。

 

まずこちらの本。150ページちょっとで,写真とか図表も多いので,短時間に読み切ることができる。急ぐときにはこの一冊だけでも読むというのがありなのだろう。ポジションペーパーを起点に,FAQと想定問答を用意するというのが,最低限とある。ポジションペーパーに基づきFAQと想定問答を用意するのが対応のキモで,そこを抑えた上で,それ以外にも必要に応じて色々やるということなのだろう。古くなっているかもしれないが,各新聞社の代表電話番号が書いてあるのは地味に便利そうな気がした。

 

もっとも,2011年初版で,2014年の増刷時に加筆がされているものの,3.11前後の諸々の状況を踏まえて書いているため,僕のようにあの当時働いていて,東電の総会の騒ぎとかを覚えている人間にとっては,想起しやすい部分も,あの頃のことを記憶していない読者にとっては,今となっては分かりづらいかもしれない。その意味では,updateをすべき時期が来ている本というべきだろう。

 

次はこちらの一冊。今度は危機管理と専門とする弁護士さんの手によるもの。読者として法曹以外を主に想定しているからか,条文とか判例のサイテーションの摘示がないのがある意味新鮮だった。まあ,出てくる判例とかは有名なものばかりなので,解説を読めば,法曹であればどれかは概ね特定可能なのではなかろうか。

 

言葉の使い方は異なるものの,キモの部分は概ね先の本と重なっているところが多いのではないかという印象だが,こちらの方が,現場で何をすべきか,より細かく記載されていて,先の本をまず手にした後でこちらを読むのが良さそうな気がした(こちらもたまたまそういう順序で読んだのだが)。記者会見の会場の設営の仕方,進行の仕方,参加者の選び方,その際の服装などに至るまで細かく目配りがされていて,逐一なぜそこに気を使うべきかの説明も付されているので,説得力が有る。

 

2冊を読むと,可能な限り情報を集め,相手が知りたいであろう情報につき(具体的な相手を想定して,その相手の立場に立って考えてみることが重要と思われる),逃げずに,開示する,不明の場合は,その旨と,次のアップデートの予定をはっきりさせる,というあたりが重要なのだろうと感じた。その際には1冊目でいっているところのポジションペーパーにこれらの情報をまとめておき,それに基づいて全社でブレずに対応をする,ということが大事なんだろう。

 

もっとも,それが簡単ではないから問題で,特に,危機的状況のときは,諸々の状況からテンパりやすいわけで,そうなると平素からの備えとかも大事になってくる。やはり容易な話ではないな,と改めて実感した。