病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと ~常識をくつがえす“病院・医者・医療"のリアルな話/市原 真 (著)

らめーん先生の

呟きを見て購入,読了した。ツイッターで鍛えられているからなのか,肩がこらない感じで書かれていて,読みやすかった。

内容に関しては,医療のあり方,についてのエッセイというところなのだろう。いくつか印象に残った点等をメモしてみる。

 

医療を演劇に例えるというのは,僕自身にとっては,未知の事柄だった。群集劇としての医療というのは,医療には,医師と患者だけではなく,その他の職種の方々も治療側に関与していること,及び,他方?で,病気の側も,現下にあるものが発現するまでには,試練?を乗り越えていることなどを考えると,納得の行くところ。

 

そんな演劇の中で,患者は主役の一人であるとと同時に観客でも有るというのも,治療を受けるというのは,自分自身の事柄であるけれども,自分の預かり知らないところで何ががなされているという感じなので,確かにそういう感じがする。そして,病に立ち向かうのは,医者や看護師,その他の病院関係者との共同作業,それをこの本では,ラインダンスという表現で示していた。医者が絶対的な優位性を持っていないという意味でも適切な表現なのだろう。

 

こうしたところについては,裁判についても似たところがあるのではないかと思う。原告なり被告,または被告人は,主役の一人では有るけれども,特に代理人・弁護人がついている場合には,観客に近い立場になることもある。自分についての事柄であるのに,法律(実体法であれ手続法であれ)の知識がないと何が何だかわからないまま話が進んでしまうというのは,医療と似た点があるのではないかという気がする。

 

その辺りの知識が不十分なために,話がややこしくなった(ように見える)事例は,最近も見受けられたので(敢えてここでは特定はしないが),そういうあたりを一般に向けて啓蒙するような本があってもよいのではないかと思う。その本では,この本でそうであったように,そもそも登場人物である弁護士とかがどういう人達なのか,その生態?を紹介することも必要になるだろう。弁護士以外の事務所のスタッフの方々,裁判官,書記官,事務官,検察官などの紹介も必要だろう。そのうえで,訴訟における法律のあり方,つまり,要件があって効果が発生すること,刑事であれば,構成要件の基本,要件該当性を事実に基づき判断すること,そして次に,事実認定の基本,つまり証拠から事実を認定すること,認定されない事実は存在しないという前提で話が進むこと,刑事であれば推定無罪の原則,について,説明をすることが必要なのだろう。経験豊富で,かつ,一般向けの文章力の有る先生にそういう本を書いてもらえたらな,と思う。

 

この本において,もう一つ興味深かったのは,なぜ医学がニセ医学を駆逐できていないのか,についての考察。内容はネタバレを避けるので書かないけど,確かに指摘には納得の行くところ。その状況を打破するには,この本のように,十分な専門教育を受けた専門家が,一般向けに,十分な情報発信をしていくことしか,ないのだろう*1。その意味で,著者の今後の本にも期待したいところだし,この本の中で自著の宣伝がチラチラ出てくることについては,目くじらを立てるべきではないのだろう。

*1:思想の自由市場論だな…