例によって、目を通せた範囲の感想を、呟いたことを基に箇条書きでメモ。
- 巻頭言は、読者に質問することを促す形になっているのは、教育的配慮のなせる技だろうか。
- 法学のアントレはテーマが恩師。文章がここしばらくのこの連載の中で比べると古式ゆかしい感じだなと思ったら、書き手がめめんと★森先生(@orz_ted)であった。内容自体はなるほど、と思う。
- 特集は民事訴訟法の解釈における判例・実務と学説。
イントロの短い文章の後は当事者の確定。いろいろ説が出てきてややこしいと感じるが、何よりも脚注6)の後がどうなったのかが気になる(駄目)。
確認の利益は、訴えを認める範囲を広げるのが悪いとは思わないものの、事実上の影響の有無を判断基準にすると外延が不明確になりそうなのが気になった。
将来給付の訴えの利益は既判力の観点からの捉えなおしというのがどういうものかよくわからなかったが興味深く感じた。
信義則による遮断は、最後の「おわりに」での整理が分かり易く感じた。
相殺と重複起訴は、弁論の分離可能性と相殺の許否という問題意識になる程と思う。
民事裁判実務と学説—権利能力のない社団の財産帰属をめぐる紛争の審判対象は、「むすびに代えて」での裁判所視点からの整理が分かりやすく感じた。
特集は学説が判例に一定の影響を与えているのは理解したけど、思った程ではないという気もしたが、寧ろ適当な裁判例が現れるのに時間がかかることを示しているのだろう。 - 新法解説の譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律は、基本的な規律の変更に絞った解説とのことだがややこしく感じた。択一試験とかで訊かれてどハマリしそうな予感。
- 講座。
憲法は議院内閣制。話にどこまで付いていけたかはわからないが、解散の限界についての議論には説得力を感じたし、昨今の状況への懸念については同感。
行政法の法的根拠なき通知の処分性は、行政処分に法的根拠を要する理由の検討が面白く感じた。理由についての考え方による差異も含めて。
民法の共同不法行為は、よくわからず、話についていけなかった。
会社法の取締役の報酬は、インセンティブ設計の話が複雑すぎてよくわからなかった。これでインセンティブとしてどこまで実効性があるのだろうかという気もするが、その辺は取締役にでもならないとわからないだろう。
民事執行保全法の考え方は金銭債権の差押え・仮差押え。手続の一通りの流れをざっと見る以上の理解ができなかった(汗)。
刑法の胎児性致死傷と結果の概念は、枕から本題へのつなぎ方が見事。本題も2つの事件について結論の妥当性を確保できる論理の追求が良いと思った。 - 演習。
憲法は撮活。それを撮活と言うか?とは思ったが、内容は面白く感じた。論点提示に留まるところがあるのは誌幅からすればやむなしか。
行政法は公共用物の占有許可と行政行為の附款。裁量論のところで判断枠組みが何故それなのかというところの説明があまりなくてモヤモヤする。
民法は契約の法定解除。感染症蔓延によるサプライチェーン途絶を不可抗力するという議論が昔のことのように思える(汗
商法は取締役の監視義務や内部統制システム構築義務、信頼の権利というあたり。監視義務の考え方についての違いの説明が興味深く感じた。
民訴は重複訴訟の禁止や既判力の作用の基準と統一的処理。いかにも演習っぽいがこういうのが大事だったりする(という割に脊髄反射的に思いつく答えが間違ったりするのだが)。
刑法は間接正犯や共同正犯・教唆というあたり。こういう話あったよねと思いつつ読む。
刑訴。逮捕勾留あたり。これまたいかにも演習問題っぽい。
労働法。雇止め。議論はわかるが実際の事例になると判断が難しそうに感じる。今のところこのあたりが問題になった事例に関わったことはないが。 - 判例セレクト。
憲法の堺市女性団体協議会への退去要請等の違法性の件は、解説最後のコメントには納得。
行政法の廃棄物処分場の汚染水対策に係る市町村間の事務管理の成否は解説が分かり易く感じた。最後に指摘されているように立法で解決すべき問題ではないかと感じる。
情報公開法6条1項の定める部分開示と情報の単位は解説での情報単位論についての議論が興味深く感じた。
民法の人身傷害保険における限定支払条項と素因減額は、基準が明確であれば付保のときに考えればいいのではないかという気もしたが、そもそも付保のときにどこまで考えられるかが怪しい気もする...と思うとどういう形になるのがいいのかよくわからないと感じた。
商法のニデックの件は、事前予告なしに踏み切った点が裁判所の心証に影響した可能性の指摘が興味深い。しかも年内最終営業日だったしね。
民訴の信用調査報告書の件は文書提出命令が認められる事例として興味深い。
刑法の具体的手口を知らない出し子の故意は、解説で電子計算機詐欺の故意を認めたことへの疑問が示されていて同じ疑問を抱いた。
刑訴の共同正犯から幇助の縮小認定は、縮小で被告人の不利益にならないから問題なしと言えるのかが疑問と感じた。
