一通り目を通したので感想をメモ。上場企業で機関法務を担当する際に最初に手に取るべき一冊としては良い本だと感じた。
研究者・実務家の錚々たる面々の手により、上場会社について会社法その他の規律について概説した一冊というところだろうか。「はしがき」に指摘のあるように、会社法は上場企業以外の企業も対象としていて、規律がわかりにくくなっているし*1、他方で、上場企業の機関法務を考えると会社法の該当部分だけを見ていても、足りないところがあり、金商法や上場規則*2による規律まで理解していないと十全な理解が得られない*3。そういう意味で、本書のように、これらを横断的に見て、統一的に把握するための書籍があって然るべきなのだろう。その点はUSのLLMに留学してCorporationsの授業を履修したときにも感じたことではあるのだが*4。
本書は全体で300頁弱という十分に通読可能な分量。4部構成を取り、第1部では上場や開示周りの規制について、第2部では機関等のガバナンス周りについて、第3部ではファイナンス周りについて、第4部ではM&Aについて、それぞれ解説をしている*5。分量の制約もあってか、詳しい解説というよりも、近時の実務動向(この辺りは、テクニカルタームの説明も含めて、少し詳しめに書かれている)も踏まえた概観をしているというところ。その分個々の論点等の解説はあまりないものの、各章ごとに、本書で学んだ後の読書案内はついている。そういう意味で、上場会社の機関法務に最初に関わる時に目を通しておくべき一冊と考えて、本書を一読した後で、より詳しい会社法や金商法の教科書や実務書にあたって、必要に応じて個々の論点等の理解を深めるのが良いのではないかと考える。近時の実務動向については詳しめに書かれているので、近時の実務動向についての知識を確認するという使い方も可能ではないかと思う。
