一通り目を通したので感想をメモ。
お世話になっている大杉先生が推薦されていたこともあり*1、購入したもの。表題は実務一年目の方向けということで付されたものらしい。200頁余と通読も十分な可能なコンパクトな分量で、平易な文章で*2、最近話題になっている内容に一通り触れられていて、この分野の現状の鳥瞰という意味では良いのではなかろうか。また、基本的な概念の定義から話が始まっているのは、いかにも法曹の著者らしいのだが、話の混乱を防ぐ意味では、良いと感じた。更に、各章の冒頭に概要が先出しされているのも、読者への予測可能性を向上させ、読みやすくしているし、各章の末尾に今後に向けた文献紹介があるのも入門書としては重要と考える。そういうことを考えると悪い本ではないとは思う。
しかしながら、いくつかの点が気になった。以下メモする諸点は、前述の本書の良さを損なうものとは考えていないことを付言しておく。
- 「教科書」というのは相応に経験のある方が書くべきものと考えるが、著者にこの分野についてどう知見・経験があるのかが、著者略歴などからは読み取り切れない印象があった。この辺りは編集時点での工夫が必要なのではなかろうか。
- 比較法では英国と米国が出てくるのみだが、それで十分なのか*3、独仏などは不要なのか、というところも気になった。
- 最終章に、コーポレートガバナンス対応部門の在り方についての提言があり、その内容の当否はさておき、提言があることそれ自体興味深いが、企業内での各部門の在り方というものの違いや相互関係について、どこまで何を理解しているのか、疑問が残った*4。
*1:著者の略歴からすれば、大杉先生が中央大学の法科大学院で教えられた方ではないかと思うが、大杉先生の「推薦の辞」ではそうとは書かれておらず、やや持って回った感じの表現になっている。却って何かあったのかではないかと気になった。
*2:この点は大杉先生の推薦の辞でも示されているところであるが、納得するところである。
*3:英米についても拾うべきものがすべて拾われてるのかというところはわからないが。
*4:最後のコラムで法務プロフェッショナル人材の確保について述べられているが、待遇については、企業全体の報酬体系の中で他の職種との整合性等を考える必要があることや、企業内法務では相談したいと思う事業部門側が相談しやすい状態にあることの重要性等がどこまで理解されているのか、よくわからない気がした。
