一通り目を通したので感想をメモ。有権者は読んでおいて損はないのではないか。
著者は憲法学者*1で、政治資金問題などを専門とされている。政治資金規正法との関係で問題ある政治家を刑事告発するなどの活動を長くされており、最近ではいわゆる裏金問題で脚光を浴びたわけだが、それもあってか、岩波新書でこの問題についての本を出された。
長年この問題に取り組まれただけあって、歴史的な経緯や、いかにして規制(ザル法なのも問題だが)をすりぬけて裏金がまかり通ってるかが、分かっている範囲で(それ以外もありそうだが)詳細付きで丁寧に解説されている。これだけわかっていながら、なぜ当の政治家が処罰されないかとも思うところだが、その点にも触れられており、検察も含め*2、どうなっているのかと思わずにはいられない。
オカシイというものはその旨声をあげないと何もかわらないわけで、目先のところでたとえ成果が出ないとしても、継続して声をあげることが重要ということになろう。冷笑だけでは事態はどこへも行かない(むしろ事態が悪化する可能性もある。)だろうから。あきらめることなく声をあげ続ける著者には敬服するしかない。
現状の制度の問題点とその解決のための改定案も示されているが*3、個人的には、「トカゲのしっぽ切り」防止のために、政治家本人の名前で政治資金について一円単位で公開するとともに、不正があれば、当人の一定期間の被選挙権停止が良いのではないかという気がしている。政治にかかわる資格の問題であって、重要な問題だと思うので、その程度の制裁を科しても問題はないのではないかと感じている。
一点だけ疑問に思ったのは、政治資金の問題というよりも、政治家の所得の問題として、税務申告の観点からも問題視され得るのではないかと感じるのだが、そういう視点からの議論は見受けられなかった点。いわゆる裏金について、課税対象外の正当な政治資金ではなく、政治家個人の所得として考えることができるのであれば、申告をしていない以上は所得税法違反という議論の余地があるのではないかと感じた*4。
いずれにしても、有権者であれば読んでいて損のない一冊であろう。