何が何だか /中野 翠 (著)

例によって図書館で借りて一通り目を通したので感想をメモ。

 

クロニカル的なエッセイとしては、小林信彦さんと中野さんのものをそれぞれ単行本を図書館で借りて読む形が長らく続いていた*1。小林さんの連載は、ご自身の体調などもあって終わりを迎え*2、ここ1,2年は中野さんの単行本を拝読するだけになっている。中野さんの連載も、「サンデー毎日」での連載一回当たりの分量が減ったことを受け、今回は、映画に関する他の連載の原稿と合わせて1冊という形で出た*3。1年分を1冊にというペースを維持しようとした苦肉の策なのかもしれない。

 

連載一回当たりの分量が減ったこともあり、ご自身のスタンスで世相を斬る、みたいなものは減って身辺雑記めいたものが増え*4、長年拝読している身としては多少寂しく感じるのは否定できない。また、お付き合いのあった方々の訃報が多く感じられるのもやむを得ないのだろう。それにも関わらず、新しいものもそれなりに見ておられるのは、すごいと思う。こちらのようなものぐさな人間からすれば感嘆しかない。これまでのお住まいの老朽化に伴う新居への引っ越しについても、諸々への戸惑い方が、何だか、らしいな、と思いながら拝読した。多少の変化はあるとしても*5、語り口や挿絵のイラストも含め、一定の立ち位置で、世間話をずっと聞いているという感じがするのは、書き手としての腕の確かさなのかもしれない。

 

1985年から続いている「サンデー毎日」での連載は、あと少しで40年というところなので、少なくともそこまでは何とか続けてほしいし*6、その後もできるだけ長く拝読できればと思うばかり。

*1:買っても、置き場所が確保できないので図書館で借りる形を取っている。時折過去のものも借り出して再読している。

*2:あれはあれで、小林さんらしい「店じまい」の仕方ではなかったかと、今は思う。

*3:映画については門外漢だが、門外漢なりに楽しめる部分があるのも確か。

*4:ある程度の内容を書こうとすると、中野さんのこれまでのやり方を前提にすれば、おそらく一定の分量が必要になるだろう。そう考えると、一回当たりの分量が減った以上は、こうなるのもやむを得ないのだろうと思うことにしている。

*5:上記のような変化は、長い歴史からすれば「誤差」という気すらする。

*6:従前の長さを維持して、その分掲載頻度を調整して隔週とかにするとかしてもらえると、こちらとしては読みごたえが出てくるのではないかと思うが...。