基本も実務知識もこれ1冊で! 管理会計 本格入門 / 駒井 伸俊 (著)

一通り目を通したので感想をメモ。相性が合う人には良い本ではないかと思う。

 

管理会計について疑問に思うことがあり*1、手元の本では今一つ納得できなかった。そこで、何か本を読もうと思い、たまたま立ち寄ったブックオフで立ち読みなどしながら考えた挙句、こちらの現状の理解度とかに合っていそうな気がしたので買ってみた。

会計士試験用とか、経理実務用の本だと、間違いなく読み切れないので、軟弱かもしれないけど、図表とかが多く、カラフルで、目先が変わって、読んでいて眠くならなかった。解説のかみ砕き方も、こちらのレベル感にはあっていて、ちょうどよい感じだった。管理会計については、自分が手を動かして計算するというよりも、誰かの計算結果を見る程度の話なので、面倒な計算はエクセルに任せるというスタンスの方が、頭が痛くならなくてよい。手を動かす練習のための問題も若干ではあるがついているので、手を動かせるようにしようという時には、まずはそれを解くのが良いのだろう。

管理会計という分野がどこまでの範囲のことを指すのかすら、わかっていないので、資本コストの話とか、バランストスコアカードの話まで触れられていたのはちょっと驚いた。300ページ強で、広範な内容を含んでいるので、個別の話についての突っ込みはそれほど深くないのだろうが*2、前述の程度のかかわり方しかないこちらのような人間にとっては、このくらいでちょうどいいというところではないかと思う。この程度の広く浅くという感じの本から入門するのもあり得るアプローチだろうと思うので。最初のところで、アレルギーを生じさせることなく、挫折することなく、第一歩を踏み出せるようにするという本も、重要だと思うし、その意味では、良い本ではないかと感じた。もちろん相性めいたものもあると思うので、相性が合えば、という程度ではあろうが。

ただ、そう考えたとしても、「その先」の読書案内がないのは、ちょっと残念に感じた。「入門」というからには、「その先」があるはずだし、そこに誘う道をつけるのも入門書の大事な仕事ではないかと思う。この点は、改訂時に適宜補っていただければと思う。

*1:単にフリーキャッシュフローの計算の際のタックスシールドの考え方が腑に落ちなかったというだけで、そこは、本書では解消できた。

*2:KPIについての記載とかは、設定の仕方を間違えると、インセンティブの構造が歪んで、組織目標の達成に負の影響を及ぼしかねないというような話がない辺りは、ちょっと浅いなと感じた。