どこまで求めるかという問題

呟いたことを基に雑駁なメモ。

 

正確な内容は失念したが、企業内法務で、外部の講習会に出席した場合に、報告などするのは無駄ではないか、というような言説に接した*1。そういう言説に至る気持ちというのは想像に難くないものの、法務部門の責任者の立場からすれば、なかなか賛同しづらいものを感じる。

 

言うまでもないことかもしれないが、日々世の中が動く中で、法令や判例・裁判例なども変化をする。企業内法務でも、そういうものの動きについては、一定の距離感で着いていくことが最低限求められる。そうなると、社内で得られる知識に限度があるのが通常である以上は*2、外部の講習会、特に有償のそれ、に出席して、学ぶことは一定程度不可避であろう。

 

そういうことを業務時間外とか自費で求めるのは不適切*3だろうから、企業側の負担で業務時間内に、出席ということになろうし、そうであれば、サボらずに出席して、真面目に聞く*4ことを担保することが管理職の視点からは必要になることもあろう。また、企業内法務部門全員に知得してもらいたい場合でも、諸般の都合で全員に出席を求められない場合は、代表として出席した人間に、受講内容を報告して、残りの人間と共有することを求めたくなることもあろう*5。最近ではwebinarなどの流行もあり、そういうものは減ったかもしれないが、立法担当者の説明などについては、なおそういうものはあるといえるのではないか。そうしたことを考えると、サボるようならそもそも費用を負担してまで行かせる必要はない、という言説にはにわかには賛成し難いものを感じる。

 

もっとも、受講者側の負担を考えると、報告を求めるとしても、求めるべき報告の内容には注意が必要かもしれない。迂闊に報告などした結果質問攻めにあったりして、自分の負担が増えてしまえば、結果的にそういうものに行くのを避けようと思うようになりかねない。自分がかつてそういうことを感じたことがないではないので、そう思う。仮に配布資料が充実しているのであれば、それ自体を見ればわかるようなことまで報告を求めることは過剰ということもありうるだろう*6。配布資料を回覧して、それに一言感想や自社にとってもポイントを付言してもらう程度で、受講の真摯性は担保されるという見方もあるように思われる*7。そういう意味では、管理職としては、どこまで求めるかについても一定の配慮が必要と考える。

 

*1:当該言説をされた方に文句を言うつもりはないので、特にリンクなどはしない。

*2:そうでないところがあるかもしれないが、例外的であろう。

*3:自己研鑽という意味では自費で外部の講習会に参加することは、自身の価値を保ち・向上させるうえではありうるのだろうが、労働法コンプライアンスを考えると、そういう対応を会社側として認めてよいのか、疑義なしとは言いづらいのではないだろうか。

*4:聞くに堪える内容であることが前提であること、そして、その前提が常に貫徹できるとは限らないこと、は確かだがその点はここでは措く。

*5:そういうことを考えると、セミナーの資料は、伝言ゲームによる情報の欠落を避ける意味で、講義内容ができるだけ載っていることが実は望ましいということになろう。その意味では、弁護士のするセミナー資料でパワーポイントの資料に文字が多すぎるという批判は、一面的という見方も不可能ではないのだろう。

*6:内容を要約して文書の形にすることがトレーニングになるということはあろうが、参加のたびにそれを求めることが適切かどうかは疑義があるのではないか。

*7:個人的にはこの程度が良いと考えている。