ジュリスト 2022年 05 月号 [雑誌]

例によって呟いたことを基に箇条書きで感想をメモ。

  • 海外法律情報は韓国の被選挙年齢の引き上げ。政治的思惑があっての話というと、他所の国のこととはいえ、大丈夫かと思ってしまう。
  • 判例速報。
    会社法の会社の自主再建と取締役の株主利益最大化義務に関する件は、解説の最後に触れられている利益相反性についてのコメントが個人的には興味深く感じた。
    労働法の誠実交渉命令と労働委員会裁量権の件は、労使交渉自体が労使間での意思疎通機能を担うと考えると、個別案件で交渉の結論が決まっていても、交渉自体は必要という話になるのは理解しやすいところではないかと感じた。
    独禁法の定期購入に関する有利誤認表示該当性が争われた事例については、表示のありようについての評価に関する批判は、文字面だけだと、評者の指摘は妥当そうに見えても、正味のところは良くわからない気がした。
    知財判例速報の、著作権訴訟における権利濫用の抗弁が肯定された件は、確かにこの抗弁が認められた事例は少なそうだけど、本件は事実からすればそうなってもおかしくないように見え、他方で、この件で認められてもね、という気がした。
    租税判例速報の、外国子会社合算税制における適用除外記載書面の確定申告書への添付の意義については、租税特別措置法の問題の規定の書きぶりがイマイチだったのが原因なのではないかと感じたがどうだったのやら(調べてないけど)。
  • 次いで特集へ。
    小泉先生の原稿は全体の鳥瞰と趣旨説明。
    最初の原稿は、某件を踏まえての産学連携の在り方についてのものだけど、きちんと契約を締結するのが重要、というまとめなのは、そりゃそうだろうけど、それが難しいんじゃないの、という印象。研究成果が将来どう「化ける」かわからないところでどうやってきちんと契約するかが大事なのでは?と感じた。
    田中先生の原稿は、中国とアメリカでの知財紛争の現況の解説が興味深かった。中国で懲罰的損害賠償の適用がまだ慎重な状況にあるものの、今後賠償金の高額化の可能性があるという指摘は、重要という気がした(既に専門家の方々にとっては自明のことなのかもしれないが)。
    工藤先生の原稿は第三者意見募集制度について、アメリカのアミカス・キュリエ制度との比較での解説が面白かった。米国とのそれの違いが日本の民訴法の規定や実務との整合性に起因していることが分かりやすかった。個人的には原稿末尾にあるように民事事件一般への拡大を考えるべきではないかと思う。
    知財調停の原稿は、知財部のJの方の原稿のようなので、ある種のバイアスを想定して読んだ方がよさそうな気もするが、一定の範囲で調停が知財分野でも有効ということなのだろう。当事者代理人サイドのコメントも併せて読みたいと感じた。
    松永先生の原稿はSEP訴訟を巡るグローバルな状況が興味深いというか関わる羽目になったら面倒そうだなと感じた。
    特集はあまり土地勘がない分野の話だけど、現状のスナップショットとして興味深かった(おそらくこのあたりに詳しい某氏がきっと熱いエントリを書かれるものと想像するところ)。
  • 新技術と法の未来、は宇宙探査と資源開発。未知の領域に対しての法規範の在り方について、既存の法規範についての議論を類推が適当かどうかを勘案しつつ類推していく部分が個人的には興味深かった。ただ、開発とかありきになっていて、その点は気になった。規制しないとやった者勝ちになりかねない状況のようだからやむを得ないのかもしれないが。それと、昨今の情勢を見ても、一部の確信犯的な行動をとる国がいる限りは、規制を設けてもその実効性には限度がでるだろうなとも思う。
  • ナントカの杜。CDPの日本側の方の自己紹介のようなもの。名前については目にしたことがあった程度だったが、本人の言ってる内容なので、一定程度割り引いて考える必要があるかもしれないが、それでも参考にはなる。
  • 実戦知財法務。出版社のインハウスをされていた先生による出版周りの実務と法制度の解説。歴史的な経緯もあって複雑な制度になっていると感じた。
  • 時論。関西スーパー事件最高裁決定について。事例判断として扱うべきとする結論に至る分析にはなるほどと思う(当否を判断できるだけのものがこちらにあるわけではないが)。紹介されている事実関係からすれば、高裁の結論も支持しうる(反対に考え方もあり得るとは思う)けど、結論を導く論理については、指摘されている問題点があるとは感じた。
  • 時の判例
    株式併合に際して株式買取請求をした者が価格決定前に支払を受けた場合の会社書類の閲覧等請求の可否に関する件は、債権額不明のまま債権額全額の支払いを受けることが不可能と考えられる以上は、判旨の通りになるんだろうなと思う。他方で、形式的に債権者に該当するという事実を奇貨とした濫用的な場合も想定されるので、そういうものへの対応も気になるけど、そこの手当てについて解説で言及があるのは良いと感じた。
    刑事の強制わいせつ剤を非親告罪とした改正法の経過措置と憲法39条の件は、手続法規の改正で、行為時点の違法性の評価や責任の重さをさかのぼって変更するものではないということからすれば、そうなるのだろうなと思う程度。

  • 判例研究。
    独禁法上の問題なしとされたプラットフォーム事業者による混合型企業結合の件は、評釈でも指摘のあるとおり、将来予測も踏まえた分析が十分だったのかは、疑問なしとはいえないと感じる。
    船主の責任制限阻却自由と原因者負担金の制限債権該当性については、海商法を一切知らないのでわからないとしかいうべきでない気がするけど、責任制限阻却事由について、船主と船長とでは別個に考えるという制度の立て付けは興味深いと感じた。
    混合契約における保険金殺人を理由とする重大事由解除の可否の件は、個別に規定されている解除事由該当性がありそうなのにその点の検討を十分にせずに包括条項に基づく解除を認めれば、それは確かに疑問アリとされるだろうなと評釈に納得。
    サムライ債にかかる債権者集会決議における裁判所認可の要否の件は、判旨が裁判所認可を要しないとした点もよくわからないと感じたが、解説におけるその理由の推測も、あり得る解釈なのかもしれない、と思う程度。
    公立小学校教員の時間外労働手当と国賠請求の件は、評釈の判旨批判にいちいち頷きながら読んだ。
    再雇用条件を提示した行為の適法性と再雇用契約成立の可否の件は、高年法の規定からすれば判旨のようになるんだろうなと思いつつも、事実関係からすれば何だか切ない気分になる。これはこちらの年齢故のことかもしれないが。
    過少資本税制の適用が認められた件については、制度趣旨からすればそうなるのだろうと思いつつも、この種の「知恵比べ」にはキリがないと溜息。
    不貞行為を理由とする不法行為に関する国際裁判管轄と準拠法の件は、結果オーライにみえて、あちこち突っ込みどころのある判旨に細かく突っ込みをいれている感じの評釈が面白かった。

  • 新・改正会社法セミナーは、株式等売渡請求等の検討の2回目。
    IIでは新株予約権の扱いについての検討。学者の先生方が新株予約権の位置づけにさかのぼって議論をしている反面で、実務家サイドの方々が、身も蓋もない感じの実務的なコメントをしているのが興味深い。
    IIIではトップ・アップ・オプションの適法性についての検討。そもそも、トップ・アップ・オプションって何だっけ?ということで不勉強を恥じつつ読む。色々な状況が想定されるがゆえに、総合考慮みたいな話になっているのは仕方ないのだろう。最後に指摘されている買収側の視点は興味深かった。
    IVは売渡請求の法定以外の取引条件を設定することの可否について。対価の支払時期について、一定の制限を設けるのは、締め出しは速やかに行うべきものと考えられていることからすれば、必要性が理解しやすい気がした。
    VはTOBと並行して売渡請求の手続を開始できるか、については、そういうことをすると、強圧性が強まる気がして、指摘があるように、成立後の速やかな締め出しの必要性を考えると、必要性は理解できるし、手続の透明性を高めれば弊害は減るかもしれないとは思うものの、TOB成立自体が微妙な時は強圧性を高める方向に行かないかという懸念は残りそうな気がした。
    VIの売渡株主による債務不履行を理由とした解除の可否については、個別解除は当然認められると思うけど、大半の対価が不払いの場合に、売渡請求の無効原因になるというのは、言われてみれば納得という感じ。
    VIIの種類株式発行会社における種類株主総会の決議の要否のところは、金銭的な解決だけで済まない話についての検討が興味深く感じた。実際に種類株式発行会社にいたことがないので、この辺りは良くわからないけど。