「シティポップの基本」がこの100枚でわかる! (星海社新書) / 栗本 斉 (著)

TLで予告を見て気になったので、入手して早速目を通した感想をメモ。

 

こちらと同年代の音楽ライターさんがシティポップの名盤を100枚選んで紹介しているもの。末尾に配信サービスでのプレイリストがあるのが今どきのものらしいというところか*1。1975年の「Songs/Sugar babe*2から2021年後半のものまでで100枚を選んで、この分野をある程度俯瞰してみようとしている。興味深い試みだとは思うが、こちらの知見不足でその試みが成功しているかどうかは何とも判断しがたい。

 

そもそもシティポップとは何か、一義的な定義が確立しているわけではない。本書では「都会的で洗練した日本のポップス」としている。納得するところもある反面で、この定義では「都会的」「洗練した」の意味内容も明快とは言い難いし、所謂ニューミュージックとの区別も十分できているとは言い難いと感じる。

 

そんなこともあって、100枚の紹介についても、これでいいのかというと疑義がないわけでない。個人的には、オフコースが一枚もないのはそれでいいのかという気がしてしまう。フォークの要素がある(特に初期)から、ニューミュージックに含まれるということなのかもしれないが、いくつかのアルバムについては前記の定義に当てはまるのではないかという気がする。

 

上記のようなことは言いたくなるものの、ジャンルとして確立しているのかも不明だし、定義自体も茫漠としているので、そんな中で選べば、多少は「偏り」が生じるのは仕方がないのかもしれない。とりあえず、最近のこの系統の音楽(ネオ・シティポップなどと表現されているが)を聴いてみようかと思ったりもするので、そういう際の手掛かりとしてはよいのかもしれない。

 

また、古いものについても、現時点でこちらの手元に音源があるのは次の6枚なので、もっと聴いてみるのも面白いだろう。6枚のうち、Sing like talkingのものは万人受けするかどうかは自信がないが、あとのものは間違いなく名盤といえると思うし*3、まあ、100枚の中にあって然るべきと感じる。

 

文句ばかりでもよろしくないので、良いと思った点もメモしておこう。

歌い手本人だけではなく、周辺の方々、プレイヤーやアレンジャー、作詞、作曲の方々にも目配りが出来ていること。よく見ると、同じような名前があちこちで見られる。そういう方々に着目して音楽を聴くというのも重要なことだと思うし、そういうところに目が向くように記載があるのは、入門書としては重要なことだと思う。

所謂アイドルの作品についても、きちんと取り上げられているところ。松田聖子郷ひろみ菊池桃子のものが含まれているのは、それぞれを聴いてはいないものの、関与している方々からすれば、おそらく妥当なのだろう。そういうものを無視していないのは重要と考える。

 

*1:もっとも達郎さんのように配信で聴けない人もいるだろうが

*2:諸説ある中で敢えてシティポップの源流と位置付けられていて、その理由付けは、個人的には納得できると感じた。

*3:80年代に聴いていたのはRelectionsだけで後は90年代に大学に入って達郎さん及びその周辺並びにSing like talikngを聴くようになってから聴くようになったものだが