某氏の呟き*1を見て思い出したことについて、例によって雑駁なメモ。例によってこちらの経験した範囲に基づく物言いなので、異論があり得ることはいうまでもない*2。
僕は、企業内法務としては、JTCと揶揄されるような企業と、米系外資企業にいたことが有ることになる。これまでの経験の中で、後者に顕著な点の一つに、"Freedom To Operate"の重視ということが有るのかなと感じたことを思い出した。将来にわたって手を縛られるのを嫌がる度合いが高いというわけだ。
そういう考え方の背後に何があるのか、考えてみると、将来、自社の方向性がどう変わるかは分からないところが多い。予想もつかない方向に舵を切る可能性もある。そう考えると、どういう変化であれ、変化しようとする方向に変化することを阻害する可能性のある要素は極力排除しておきたい、変化の障害となってリスクとなるようなものは取り込みたくない、というところなのだろう、という気がする。
そういう発想からすれば、将来にわたる約束については、消極的になるか、仮にやむを得ずに、約束することになったとしても、一定の手続きで自社の意向のみにより(裏を返せば相手側の意思に拘わらず)当該約束に基づく拘束から離脱可能とすることを重視することになるのであろう。一旦ゼロクリアして、将来のフリーハンドを確保できることが重要ということになろう。
取引基本契約に、解除条項があることについて違和感を述べられているのを見て、上記のようなことを思い出した。確かに、取引基本契約に基づく個別契約を成立させなければ、あまり実害がなさそうにも見える。しかしながら、その取引基本契約が効力を有したままだと、同じ相手と新たに別の条件で取引をしたいときには、その存在が影響する可能性もある。相手方からすれば、効力が残っている取引基本契約があれば、それを前提に議論をする方が効率的と考えるのは、不思議な話ではないだろう。そういう時に、自由に交渉ができる余地を確保する意味では、過去の遺物となった契約が「悪さ」をしないよう、そもそも締結する際に解除可能とすることが重要となるものと考える*3。
他方で、JTCと揶揄される*4、企業においては、そういう点についてそこまで気にしていないことが多いのではないかという気がしている。話し合いで何とかする、できるだろうという根拠があるのかないのかわからない考えに基づくものと思われるが、本当に何とかなるのであれば実害はすくないのかもしれない。しかしながら、これまで僕が経験した範囲では、そうでもなくて、苦労することもある。そういうところを前提に考えると、少なくとも一定程度は重視した方が良いのではないかという気がしている。