ザ・ビートルズ:Get Back

コロナ禍のせいで配信での公開となり、しかもDisneyかよ、と思ったが、見たい以上は仕方がない。映画館のスクリーンで観たかったが、節を屈して登録をして配信を見た。観ないで後悔するのは嫌だから。全体が長いのに、公開期間が短すぎて一度しか見られなかったけど。【追記:公開は27日までと思ったがそうでもないようだ。正直よくわからないが。】

 

個人的には見てよかったと思ったが、他人様にお勧めするには躊躇う作品。ある程度彼らの曲を聴き込んでいないと*1、冗長さが先に立ってしまって、楽しめないと思うから。

(以下ネタバレも含むのでそのつもりで)

 

 

*内容の紹介は、専門家の方の呟きを参照(#ゲット・バック とハッシュタグが付いている)のこと。

 

ざっくりいうとBeatlesの末期(というべきだろう)に撮られたもの。50年前の映像がここまでクリアに見られるのには驚いた。全体は3部構成で合計時間は470分。新曲を完成させてライブで披露するということで映画を撮り始めるが、観客を入れたライブ自体は結局実現できず、代わりにApple(昨今の林檎屋ではなく、彼らの作った会社の方だ)の屋上での所謂roof top session(40分ちょっと。なお、セットリストはこちらを参照。)が無許可で強行するに至る。そこまでの3週間のドキュメンタリー。roof top session自体の映像をフルで見るのは僕には初めてのこと。

 

彼らの末期の状況を伝える映像としては映画Let It Beが有名だろう。今回の映像と同じものが使われている部分も多いと思われる。僕は、映画Let It Beを最後に見たのが30年以上前で、その時には悲壮感みたいなものを感じたことを記憶しているが、今回の映像ではそういうものはそれほど強く感じなかった。グループ自体に「死相」というか、もう長くないなという感じが漂っているのは今回も感じたとしても。

 

Paulが何とかグループを続けようとして、仕切ろうとするけど、仕切り方が良くなくて*2、却ってGeorgeの脱退発言まで生じさせる(この手前で一度Ringoについて同様の事態があったはずなのに..)。そこの辺りで第1部が終わる。

第2部冒頭の食堂でのJohnとPaulのGeorgeの脱退に関するやり取りは生々しい。隠し撮りされていたのが、出てきたのは色々な意味で凄い。ともあれ何とか彼を呼び戻し、助っ人としてBilly Prestonが入る辺りから徐々に立ち直ってくる。そして、ライブを何とかしたいというところで、手配は間に合わないから自社ビルの屋上で、ということになる。

第3部では、その準備状況とライブが収められている。ライブは、40分ほど続くが、騒音のために警察がやってきて終わる。

 

若者のグループが功成り遂げて、大人になって、それぞれが配偶者を得て、という過程をたどっていること、技術的にコンサートが難しい(作った曲がステージで再現できない、ライブのPAが不十分で自分たちの演奏が聴こえない)状況にもあったこと、彼らが功成り遂げるまで彼らを纏めていたBrian Epsteinが亡くなったこと等を考えると、ライブ重視の彼らはいずれにしても解散するしかなかったのではないかと考える。ともあれ、彼らの最後のこうした状況を映像で見ることが出来たのは良かった。できればDVDを入手したいと思う。

 

最後にいくつか印象に残った部分を箇条書きでメモしておく。

  • レコーディングがかなりグダグダというか、曲とかもきちんとできていないまま突入して、曲も歌詞も演奏しながら作るところ。概ね彼らは先だった。曲の完成度が徐々に上がっていくのは面白かった。
  • レコーディングがたばこをくわえつつ(麻薬も、かもしれない)、酒を飲みながら、親しい人たちがいる中でなされている点も驚いた。雰囲気はリラックスするだろうけど。
  • 彼らがソロになってから、Beatles時代に作りかけだった曲を仕上げて出したものがあるのは知っていて、JohnのJealous GuyがChild of natureという題名でBeatles時代に制作されようとしていたのは知っていたけど、On The Road To Marrakeshという題名でこのセッションで演奏されていたことや、GeorgeのAll thing must passはPaulのTeddy boyとかもそういう中に含まれているのは知らなかった。
  • Lindaや他のカメラマンがNikonのカメラを使っているのはやや嬉しくなった。

 

*1:僕もマニアを名乗れるほど詳しいわけではないが。

*2:エラそうな物言いを相手の眼を見ずに言うというのは駄目だろそれとしか言いようがない。