返し方を考える

何だか良くわからないけど、呟いたことなどを基にメモ。

 

法務の方で社内の法律相談を返信する際にわかりやすくするためのコツ、みたいな話がTL上で出回っていたので、ちょっと考えてみようかと思った次第。ものすごく当たり前のことのような気もするが、ご容赦あれ。例によってこちらの経験の範囲でのメモなので異論などがあり得るのはいうまでもない。なお、当然のことながら、こちらが以下のことをすべて履践できているとは言い切れない(汗)。自分のことを大きな棚の上に上げないと書けないこともある、ということでご海容をいただければと思う。

 

そもそも相談が来て、お答えを返す、というのは一体どういうことだろうか。何か法的な疑問を抱いた社内の依頼者が法務に質問というか相談を持ち掛けてくる、というのが前提にあるはずである。つまり、依頼者は、何かをしようと思っていて、その際に法的な問題があるのかないのかというあたりが気になって、法務に質問にやってくるものと考えられる。ということは、答えを返した後、依頼者は何らかの行動を取ることが想定されていて、答えの内容は相談者の行動に影響を及ぼすはずということになる。

 

また、ある意味で極めて当然のことながら、相談者は、法律に明るいとは限らない(明るくないとも限らないことも同様に留意すべきと考える)し、法律に関心があるとも限らない。関心のない人にとっては法律的な議論を長々読まされても(聞かされたとしても一緒だろう)、眠くなるのが関の山ということも踏まえる必要があろう。

 

とりあえず、以上のような前提を踏まえて、考える必要があるように思う。以上のような前提で、集めるべき情報を集めて答えるべきと考えた内容が一通り頭の中でまとまったとして、どのように返すか、ということを考えてみる*1

 

まず最初に考えるべきは、回答の射程という気がする。これは、単に目先の問題に対する回答だけする場合と、今後も含めた教育的視点を入れて回答する場合とあり得て、そのいずれかによってはでも返し方が異なると考えるからである。後者の場合はある程度一般化・汎用化した形で説明する形をとることになるように思われる。相談の対象になっている問題について、再発の可能性がある場合には、現時点で汎用性を持たせた形で回答することで、再度相談が持ち込まれるのを防いだり、相談することなく対処できるようにすることで、迅速な対応を可能ならしめる余地が出るものと考える。

 

同じく最初に考えるべきことしては、「人を見て法を説け」という諺もあるように、相談者の状況を勘案することだろう。こちらの回答を理解し実行する能力、具体的には、言語を理解する能力、法律的な用語を理解する能力、行動を求めたとしても行動に移せるだけのやる気の有無、やる気があったとしても、社内的に実行可能なだけの権限やリソースがあるか、というあたりが入ってくることになろう。アリバイ作りのために言う場合(そういう場合があるのも事実だし、それはそれで重要だが)を別にすれば、こちらが回答した内容を理解して、必要な行動がとれるか、どこまでのことを言えるのか、ということの見極めが必要になるはずである。そのあたりを無視して言ったところで結果に結びつくことは望みづらい気がする。権限のある人間は往々にして時間というリソースがない(要するに忙しい)ということになりがちなのは言うまでもない。

 

これらの点をふまえつつ、具体的な返し方を考えることになるものと考える。メールで返す場合を前提に具体的な注意点として思いつくものは次の辺りか。

  • 原則は結論から書く。長々書くと結論まで読んでもらえないから。ただし、これをすると、結論しか読まないという相手が出てくるので、それでは困る場合、結論以外の内容も踏まえた行動を求める場合には、工夫が必要となる。
  • 長々書かない。長いとそれだけで読んでもらえないから。
  • 箇条書きとかを使って文章の構造化をする。こちらの説明の論理構造が見えづらいほどそうすべきだろう。
  • 法的検討の詳細は、必要に迫られたとき以外書かない。依頼者はそんなものに興味はないのが通常だし、依頼者にそれを理解してもらう必要もないのが通常だから。仮に何らかの言及をするにしても、詳細を細かく書く意味はあまりないことが多いのではないか。
  • 法律用語は、使う側の弁え(リテラシーというべきか)を踏まえて書く。法律用語という専門用語を使って議論をするのはその方が議論の正確さが保てるから。その意味では、通じる(使っても相手が嫌がらないという意味で)のであれば、法律用語を使った方が正確かつ簡潔に説明ができるだろう。とはいえ、それで相手の読む気を削いでは意味がない。なので、使っても相手が読む気を削がれないとわかっている場合を除き使用は避けた方が良いと考える。
  • 添付ファイルに回答の内容を丸投げしない。少なくとも本文を読んで概要は把握できるようにする。いちいち添付ファイルを開くのは煩雑なので、本文に書けることは本文に書くのが良いと考える。過去の勤務先の役員でメールをblackberryで見ていて、添付ファイルを見ないという人がいた。今のスマホでも添付ファイルをあけるのにひと手間余計にかかるのは事実なので、この点はなお重要な気がしている。
  • 状況次第ではメールを送りっぱなしにしない。メールの流量が多いと埋もれて見落とされる危険があるので、すぐ読んでほしいときとかには、送った旨を音声通話(電話またはその類)で説明することが多い。その際に送った内容のさらに要約を説明するとかすることもある。こういうことを嗤う向きもいるが、他のメールに埋もれるとか、スパム認定されて気づかないとかいう事態は起こりうるので、この種の対応も重要と考える。

 

*1:ここまでの過程において、同様に留意すべき点としては、そもそも依頼者が適切にこちらに質問をすることができているのか、という点も含まれるべきものと考える。この点は、今回のエントリの本題から外れるので、以前書いたこちらのエントリをご参照あれ。