何がなんだかわからないものの、先日のこちらのエントリとも絡むかもしれないものをメモしておく。
例のKKさんの件をうけて、こちらも、NYBarに合格していることが、再評価されるという謎の余禄がついてきたりする。他方で、NYBarに関するご質問を複数の方面から受けた。ネタがないこともあり(汗)、個別に回答した内容などを纏めてメモしておこうかと思った次第。
以下はこちらの経験及び観測の範囲に基づく一意見でしかない。そのため他の見方があり得る点、ご留意いただきたい。事実誤認などがあれば適宜の手段でお知らせいただけると助かります。
ご質問は、簡単に言えば、日本の本試験とNYBarを比べてどちらが難しいのか、というところ。
上記に対して、素直に応えると誤解を招きそうな気がするので、やや手前のところから答えを始めてみる。そもそも両者の立ち位置には差異があると思うので、素朴に比べてよいのかというところから、疑問がないではない。
US(NYも含め)のbar examは、書類仕事などを別にすれば、通常は、実務家になる最後の関門になるはず*1。USのローではJDコースでの教育で、実務家として世に出すための教育は済んだという前提のようで*2、最後の最低線の能力チェックがBar examという印象。広く浅く知識や技能を問う感じということになっていて、ローを修了してから2か月程度で詰め込んで、乗り切るというのがJDコースを出た方々の標準のようだ。ローにいる間から対策をすることはおよそ想定されていない*3。そもそも、広く浅い知識や技能を詰め込んで、みたいなものはUSのローでは求められることはほぼないようなので、切り換えて対応することが必要となるけど、そのあたりで上手に対応できずに落ちる人間はそれなりにいる。そういうことを短期勝負でやるとなると、難易度は結構高いように思う。
とはいえ、難易度という点ではその程度の準備期間でクリアできるのが前提。年に2回試験はあるし、日本のように受験資格を得てからの受験回数制限もない。初回受験者の合格率が50%を切ることはない模様。
他方、日本の司法試験。基本的には、司法研修所という実務家養成施設に入るための試験。その意味で、そもそも試験の立ち位置が違う。実務家になる最後の関門という意味でbar examと同じ位置にいるのは、寧ろ司法研修所の修了試験の考試、通称二回試験の方なのではなかろうか。こちらの問題自体の難易度は、Bar Examとはけた違いだけど、今は落ちるのが1%とかで、そもそも結果発表が不合格者発表というレベルなので、試験を突破するだけに絞れば難易度は高いとは言い切れない。
日本の司法試験は、日本のロースクールを出た、または、予備試験(一桁以下%の合格率からすれば、司法試験よりは難しいという見方も可能だろう)合格者が受験する。年1回の実施で、受験資格を受けてから5回目までしか受験できない、という制限がある。プレッシャーはかかる。合格率があがったといっても40%とかが精々。日本のロースクールや予備試験の準備と並行して準備をしてもこの程度*4。
ここまで言うと、試験単体で言えば、言葉のハンデを別にすれば司法試験の方が難しいというのは理解しやすいのではなかろうか。
ただし、もう一点忘れてはいけないのが、日本からUSのbar examを受けるのは日本で司法試験に合格している人の割合が高いこと。受験勉強それ自体に対する耐性とかが高い、対応能力が高い人が多いことも留意が必要な気がする。
ここまで考えると、USのBar Examの方が簡単と安易にいうことはできないはず。
*1:MPREとかを受ける順序が異なることが有り得ることは付言しておく。
*2:一つ書き漏らしたけど、ロースクールなるものに入る難易度、特に上位校に入るためのもの、について比較すると、USの方が難しいのではないだろうか。
*3:この点、僕らのようなLLMという別口コース経由での受験者はその点は異なることが有り得る
*4:話はそれるが、日本もアメリカも法律事務所の内定は早めに出る。アメリカだとロースクールの1年目が終わったあたりで出てしまうことがあると聞く。日本では、司法試験の結果が出る前に出ることもある。極端な事例だと、優秀そうな大学生は予備試験の結果が出る前に出ることすらあると聞く。アメリカは、学校や1年目の成績とかに着目して採用になるみたいで、試験の性質が先に書いた通りなのを考えると、bar examで落ちたことは大きな問題にならない。給料はさておき(ここは資格に紐づく部分があるので)事務所を追い出されるとは限らないとも聞く。日本は司法試験の結果が合格で、司法研修所も無難に終わるのを前提というか条件として内定が出るので、落ちると一旦内定は消える。そういう意味でのプレッシャーは日本の方が高いかもしれない。