コーポレートガバナンス・コードの読み方・考え方〔第2版〕/ 中村 直人 (著), 倉橋 雄作 (著)

一通り目を通したので感想をメモ。コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」とする)について、概要(ただし2018年時点のものだが)を把握するには良い本ではないかと感じた。

 

今般のCGコードの改正に伴うお話に対応する前提として、現状を理解しないと、と思ったが、そもそも不勉強だったので(汗)、本書を購入して、目を通してみた。会社法周りの書物では定評ある先生方の手によるもので、200頁ちょっとで全体像を逐条で解説しているので、「最初の一冊」としては適切と思われる。解説内容は条文の繰り返しめいた部分も目立つが、この手の文書に慣れていない読者がいるかもしれないことを考えると、やむを得ないところもあろうかと思うし、総じてわかりやすかった。

 

個人的には本書で引っ掛かったのは、そもそもCGコードの位置づけというか、なぜこれに従わないといけない(コンプライ・エクスプレインのいずれの対応をするにしても)のか、というあたり。書いていてほしいことが書いていないという印象。もちろん、この点は、東証が定めたから、というのが答えとなり得て、それはそのとおりなのだけど、上場規則とは別のかたちでこれを定めた理由付けとかが腑に落ちない感じがした。規則のように100%の遵守を前提にしていない、ソフトローという形だからなんだろうけど。

 

この点についてさらにいえば*1、ソフトローなるものそれ自体にも、違和感が残る。民主的な正統性があるかどうかに疑義があるのに、なぜ「ロー」なのか、という疑問がある。CGコードについて言えば、要するに投資家の要求というか、札束でいうことをきかせるにおいがする(そのこと自体は資本主義の下では直ちに批判されるべきものとはいえないだろう)のに、「ロー」という美名?の下にするのか、という点で違和感がある。

 

話がそれたが、本書については、CGコードについての簡潔な概要書としては、良いと思うので、今回のコード改正後の速やかな改訂を期待する次第*2

*1:この辺りは既に別のエントリで文句を書いたが、備忘のためにこちらでもメモしておく。

*2:個人的には、もう少し実際の開示例、それも、優等生的な企業の事例だけではなく、ほどほどの事例が欲しいところだが、そうすると簡潔さを阻害するので、それは他の書籍に期待すべきかもしれない