みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」/ 日経コンピュータ (著), 山端 宏実 (著), 岡部 一詩 (著), 中田 敦 (著), 大和田 尚孝 (著), 谷島宣之(著)

出た直後に本屋で見かけて気になっていたのだが、今更ブックオフで見つけて捕獲し、目を通した。

 

ざっくり言えば3銀行合併*1でできたみずほ銀行のシステム統合が2019年に終わるまでの19年の歴史を振り返る本、という感じだろうか。

 

こちらは、就職した際に作った銀行口座が富士銀行のもので、それ以来その口座を使っていて、昨今のシステム統合に伴う延々と続くATMの使用停止のお知らせに対応したり(要するにその期間使いそうな金額をあらかじめ引き出していただけだが)、初職のメインバンクがみずほで、2000年(こちらは法務だった)に経理系の方々がシステム周りで影響を受けて大変そうだったのを見たことを覚えているので、みずほのシステム統合には関心を覚えた次第。

 

歴史を振り返るという割に、第1部が直近の勘定系の新システムへの統合の話、第2部が東日本大震災直後の大規模障害に関する話、第3部が合併直後の大規模障害の話、と、時系列的に倒述になっていて、そういう叙述の順序になっていることに、特段の必然性は感じなかったので、何だか読みにくいだけに思われた。

直近の統合が相当慎重に時間と手間をかけて行っていて、それには相応に理由があったことも説明されていて、それはそれで納得できたところだが、そこまでのことをしたのも、過去の失敗を踏まえてのこと、と思われるので、やはり、時間軸に沿った形で書いてもらった方が、読みやすかったのではないか。

 

混迷を深めた原因については、ITのわかる経営陣がおらず、現場に「丸投げ」していたことなどの指摘があり、それはそれで納得するのだけど、仮にITのわかる経営陣がいたとしても、程度はさておき混乱は避けられなかったのではないか、という気もした。PMIの中でのシステム統合の難しさという問題*2は、ITのわかる経営陣がいればすべて片付くとも思えないので*3

 

あと違和感が残ったのが、著者の「上から目線」加減。後知恵や、内情を知らない外野からの評論であれば、正直、何とでも言えるという側面があり、反面で、内情を知る人の話は、守秘義務とかもあるだろうから、出てくるはずもないので、何だか一方的な印象が残った。他方で、そう言う割に、不適切な報道が混乱を加速したという物言いのところでは、その中に自社が含まれていないかどうかについては言及がなく、自社の無謬性に酔っているかのような印象も感じずにはいられなかった。

*1:4銀行じゃないのかという説も中に出てくるし、その説に相応に理由があるのも事実。

*2:過去の勤務先でもその種の問題は見たことがないわけではないので…

*3:必要条件だが十分条件ではないというところだろうか。