法学教室2020年6月号

呟いたことを基に感想を箇条書きでメモ。いつもに増してこちらの不勉強を実感したのでありました(汗)。

  • 巻頭言。「キャリフォーニア州」という表記に驚愕する。発音には近い気がするけどそこまでしないとイカンのか、と疑問。*1いっそのことアルファベット表記にすればいいのに。 
  • 法学のアントレは、学者の方が留学でLLMの学生に入るというのがなかなか興味深かった。学者の方でもLLM修了に難儀するのか、というところが印象に残った。
  • 判例セレクト。刑訴は、手続上の問題点がなかなかすごい。瑕疵の治癒の仕方についての判示が興味深い。刑法は、正当防衛での防衛行為の相当性の判断に防衛者の主観を勘案しているのは、そういうのありなの?と単純に疑問。商法は、事案がアレ過ぎるが、解説は穏当と感じた。株主の権利行使の在り方に関わる話だから会社がそこに制約をかけるならば謙抑的であるべきということなのだろう。民法は、求償も逆求償も使用者と被用者との間での損害の公平な分担をはかる手段とみれば、双方認めるべきということかと。行政法は、結局は財源問題なの?という疑問が残った。憲法は、裁判の公開に実質的な傍聴の保障まで求めれば、この事案の下では結論はそうなるよな、という印象。
  • 演習。刑訴は、職務質問とか所持品検査のあたりの理解が不十分なところを正してくれる感じで個人的には有用。刑法は、正当防衛に関して、侵害回避義務や自招危難等についてなぜそれが問題になるのかというあたりからの説明がわかりやすかった。民訴は、事情変更による賠償額の変更請求について、一部請求論と民訴法117条類推適用論の比較が興味深かった。個人的には後者の方が説得的に感じた。商法は、取締役会における代取解任決議における被解任者の特別利害関係の有無についての検討が興味深い。民法は、94条2項周りの話が丁寧。行政法は、裁量統制のあたりで審査基準の選び方が解説からは見えてこないように感じたけど、紙幅からすればやむなしというところか。憲法は、パブリックフォーラム論の解説がわかりやすかった。
  • 講座。刑訴は、休載なのは残念。刑法は、240条の話が、答案での表現の仕方とかも含めて丁寧に書かれている印象。民訴は、訴訟物理論の話は、興味深いのだが、この連載を読めば知的好奇心を刺激されるはずだという著者の確信に満ちた姿勢が個人的には気持ち悪い。民法は、「賃貸人の賃借物返還義務・原状回復義務・収去義務」と表題にあるが(目次にもある)、賃借人じゃないの?という疑問。表題を別にすれば、これまであまり考えたことがない話題だった(汗)こともあり、興味深く拝読した。保管義務を尽くしたにも拘わらず生じた損害は、原状回復義務の対象外というところで、不可抗力事象以外にどういう事象を想定しているのかよくわからなかった*2行政法は、原告適格についての解説で、どこかでみたな、という内容ではあるが、新潟空港訴訟についてのコラムの記載は興味深かった。憲法は、法令一般審査・適用審査・処分審査の区別の整理がわかりやすかった。論者によって用語が違う部分は何とかしていただいた方が学修上は有益だとは思うけど…。
  • オリ・パラの話は、来年オリ・パラの開催が可能かそれ自体について、控えめに言って疑義がある状況下だと、何だかなあという気がした。
  • コロナウイルスと労働法のところは、雇用調整助成金の対象拡大の理論的根拠についての指摘が興味深かった。
  • 定期試験についての特集は、初めて期末試験を迎えようとする方々向けに、丁寧に説明しようとしているのはわかるけど、一科目くらいは問題例と答案例を示した方が理解し易いのではないかと感じた。文字にどう表現するかのところの説明は、特に学部で初めて法学の答案を書く読者に向けては、言葉足らずな気がした。
  • 国家的法益に対する罪の論点の特集。確かに、司法試験の論文式試験との関係では手薄になりがちな感のあるところ(実際こちらはそうだった)なので有用と思われる。公務執行妨害罪の記事では、適法性の判断基準についての議論が興味深かった。犯人蔵匿等罪の記事では、H29決定の理解の仕方が興味深い(司法試験H29合格で、司法試験以後刑事系は縁遠いのでこの決定はフォローできていなかった)。証拠隠滅罪の記事では、H28決定を知らなかったので焦る。重判とかまでフォローできなかったので仕方がないのかもしれないけど。偽証罪虚偽告訴罪の記事では、虚偽告訴罪の保護法益についての議論を知らなかったので(汗)、興味深かった。共犯関係・親族関係の記事では、諸々の整合性の取り方が興味深かった。賄賂罪における「職務に関し」の意義の記事では、躓きの石の回避の仕方がスマートでよいと感じた。いずれにしても、刑法の勉強不足が身に染みる(汗)。

 

*1:この点を呟いたら、田中英夫先生由来というご指摘を数多くいただいた。

*2:不勉強がばれるな。いや、既に自明かもしれない(滝汗)。