法学教室2020年11月号

呟きを基に箇条書きでメモ。

(up後に一部追記などをした。)

  • 例によって後ろの判例セレクトから。刑訴法はそもそも二分論自体知らなかったが(汗)、条文上の根拠もなく、令状請求の前後で、被処分者にとって何が変わるのか、明らかではない気がして、なぜこのような議論がでてきたのかもよくわからないという印象なので、判示はそうなるだろうと感じた 。刑法は結論的に偽造罪は成立しないだろうとは事案を見ても思うけど、その理屈付けが興味深い。民訴は、少数意見も含めて、諸々の要請の平仄をどうあわせるかが興味深い。個人的には少数意見の指摘には賛同するけど、解説にあるようにその及ぶ範囲は吟味が必要なんだろうと感じるところ。商法は、そもそも有限会社法自体知らないので(汗)、そういう規定になってるんだ、ふーん、という以上の感想が持てない…。民法は、民訴と同じ事件だったが、指摘されている問題点も含めてなるほどというところか。定期金賠償が一律に良いわけではないにしても、そちらの方が良い場合もあるということかか。行政法は、国賠法の求償権の行使について、複数の公務員への求償について、無資力の公務員のリスクを他の公務員に負担させたのは、どこまで妥当な話なんだろうか。行為者間に緊密な関連共同性が認められないときにも妥当する話なのか、気になるので、解説での指摘には納得。もう一つの行政法判例は、仕組み解釈からそうなるというというか、そう考えないと具合悪そう、というところだろうか。結果の妥当性から逆算したのかもしれないけど。憲法判例は、過去の事件との比較が面白い。確かにメイプルソープ事件が事案としては、違いはあるものの、近いのだろう。
  • 演習刑訴。事例の捻り方がそう来るかという感じ。差し押さえ代わりの写真撮影については、積極説で考えていたが、消極説の論拠もなるほど一理あると感じた次第(汗)。民訴。文書提出義務の話で、内容自体はオーソドックスという気がしたけど、そもそも実務でまだこのあたりの話を検討したことがないので迂闊なことは言いにくいような。商法。利益供与の話。規定の沿革から説く解説はわかりやすい。「株主の権利の行使に関し」のところで2つの考え方とその実務上の分かれ目の説明も興味深い。行為者の主観の立証しづらさを補う120条2項が株主以外に適用がないところは、それでよいのかという気もしないでもない。民法。錯誤取消の要件検討が丁寧だけど、売買契約で買主は売主が誰かを気にするとはいえないけど、売主は買主が誰かは気にするという趣旨の指摘には疑問。後者は支払い能力の問題があるのはそのとおりだが、特定物売買の時は買主は売主の素性を気にすることもあるのでは?と疑問。たとえば、絵画の売買で画廊勤務の画商が売るのと、売買絵画と接点の見えないオジサンが売るのと、いずれかを買主が気にすることもあり得るのではないか。行政法。設例の事案から高根町最判を思い出して処分性はないという前提で検討をするのかと思ったら、処分性を見出そうとする検討がなされていて、その当否はさておき、検討内容も興味深かった。憲法。行政手続への35条の適用の仕方については、判例の規範が、複数の要素の「総合判断」になっているので、分かるようで分からない感じが残る。刑法。錯誤論が監禁罪との関係でどういう現れ方をするのかというところが興味深い。
  • 講座。刑訴は、同種前科・類似事実による立証については、弊害をさけつつ、どこまで立証に使いうるかということのバランスのとり方が難しいと感じる。民訴は、内容がこちらの知的好奇心を刺激しなかったわけではないが、読者の知的好奇心を刺激したに違いないと言わんばかりの書きぶりは、押しつけがましく感じる。読者の評価に任せるべきであり、著者が押し付けるものではない。会社法は、譲渡制限株式周りの話で、諸制度のバランスと整合性を重視した解釈論という印象。何と何の整合性を重視するべきかを考えられるのかが重要なのかもしれないと感じたけどどうなんだろう。民法は、受領遅滞の解説。受験生時代も手を抜いた辺りなので、どうしても理解に不安が残る。その意味ではこういう記事で一から解説を読めたのは良かったと思う(理解できたかはさておき(汗))。行政法は、行政上の不服申し立て。無駄に制度が複雑という気がする。特に、審査請求、再調査の請求、再審査請求の区別とか。ここは、元の処分の立て付けの差異の反映でもあるのだろうけど、元の処分の立て付けの差異の説明があまりない(ように思う)ことも一因でそう見えるのだろうけど。憲法は、憲法およびその外まで含む人権法についての話で、その重要性が近年高まっているのは理解するけど、司法試験レベルまでのところでそのあたりまでやろうというのはちょっと荷が重い予感。一国の中での憲法に基づく秩序とは緊張関係にある部分も出てくるし。
  • リツイート事件の奥邨先生の解説は、興味深い事件の判決だけに興味深いのだけど、こちらの不勉強で消化不良気味。田村教授の評釈も見てみないといけない気はするけど(汗)。
  • R2著作権法改正における「侵害コンテンツのダウンロードの違法化」については、改正までの一連の紆余曲折やその到達点、今後の問題点の概観がわかりやすかった。条文の作りがわかりづらいのは何とかしてほしいところだが…。
  • スーパーシティ法は、地元自治体の意見の反映のさせ方が弱い印象。なので、「意識高い」系に自治体が引っ掻き回される危険に対して脆弱な立法なのではないかという気がする。
  • 法学教室プレイバックは、憲法分野で、紹介されている記事は面白そうではある(さすがに紐解く元気はないが)。
  • 最後に特集。個人的にはあまり馴染みのない話なのでとっつきにくい気がしているものの、私人論は、行政法を理解する際の視点の置き方という点で興味深い。行政機関個人情報保護は、個人に対する行政の行為に関する説明責任の担保として見たらどうなるんだろうとか思ったりした。租税罰金以外の(以下略)は、間接強制の手段の整備は確かに重要だよなと思う。ここまで法整備が議論されてこなかったのは何か理由があるのだろうか。法定外抗告訴訟の記事は、実際の利用場面がほとんど想定できないというのは、まあそうなんだろうなという印象。その当否はさておき。仮の救済については、正直どこまでの実効性があるのだろうと読んでいて疑問。注13の阿部泰隆先生の指摘を読むと余計にそう思う。自治体関係訴訟は、縁遠そうな感じで、よくわからなかった。
  • 自治体現場で活かす法学は、独自概念を条例で定めた場合の対応の大変さが印象的だった。社内の雛形で特異な概念を規定したら、事業部門から質問の嵐が来て対応に苦慮する、みたいな話を想起した。最後に宣伝というか勧誘で締めるのは流石。
  • 法学のアントレは、ある意味で基本の基本みたいな事柄だけど、それとても誰かから教わる必要があるから、こういう記事は重要だと思う(まあ、この時期に乗せるべき内容かというところでは色々な考えがあるのかもしれないけど)。
  • 巻頭言は、思考の経済の限界、みたいなものを感じた。