法学教室2020年5月号

呟いたことを基に感想を箇条書きでメモ。

  • 判例セレクト。刑訴は、起訴議決制度の意義についての指摘が興味深かった。刑法は、当該事案での中止行為の評価の仕方が興味深かった。商法はコメントに同意。判旨の論理付けは説得的ではなく、類型論が雑すぎと感じた。民法は、判旨には納得だし実務上の影響が大きいとの指摘も納得。行政法は、指摘に納得(中原先生が関西学院に移られたのは知らなかった)。憲法は、ヘイトスピーチ規制を条例でするの?というのは疑問だった*1
  • 演習。憲法は、そのネタ来るか(謎)というところで、なかなか興味深い。行政法は、通達行政周りの話の対応はそうなるかと(汗)。民法・商法・刑法・刑訴は、まあ、そうだよねと。司法試験対策然としているというところか。民訴は、親族相続法の改正の話が十分フォローできていなかったので、なるほど、と思った。 
  • 講座。刑訴は前置きが長いなあ、という感想。321条3条の要件論は興味深いのだけど、実際にどういう尋問をすべきかについては言及がないのが個人的には残念。刑法は、共犯の射程と裁判例の整理で、射程を否定している事例の分析が興味深かった。民訴は、内容は興味深いが、この雑誌の講座としてこれでいいのかというところはよくわからない。商法は、決議の瑕疵の類型と可能な訴えの種類の表がわかりやすくて良いと感じた。民法は、「特定」の議論は個人的には難しかったが、改正後の論点のありようは興味深い。行政法は、処分性を4つの要素から解説するのは、個人的には新奇なものだったが、内容はわかりやすく、こちらの理解からしても違和感はなかった。憲法は、立法不存在の意見と確認訴訟のところが興味深かった。個人的には消極的確認判決については、違憲是正のための立法を促す効果もあるのではないかと思うので、積極的に評価してよいのではないかという気がしたけど…。
  • アンチドーピングの記事とか、Society 5.0とか豪雨災害の記事は、興味がいまいち持てなかった。とりあえずSociety 5.0ってのは何だかイマイチなネーミングな気がした。そのあたりは官が余計なことをしないほうがいいのではないかという気がした。
  • 特集。Iの記事は、歴史的事実の適示が長すぎて、憲法学との関係についての言及が少なすぎるような気が。IIは、事前規制そのものと事前規制たる側面を有するもの、との区別がわかってなかった…(汗)。IIIの記事は、現下の情勢だと29条3項についてのより詳細な言及が欲しくなるが…。ともあれ、森林法事件判決の位置づけの変化が興味深い(例外扱いする傾向は知らなかった)。Ⅳの記事は、第二院の存在意義をどこに見出し、それをどう確保していくかというところが、興味深かった。Vの記事は、違憲立法審査権についてのこちらの勉強不足が露呈した気がするが*2適用違憲についての議論の精緻化の実益がどこにあるのかが良くわからなかった。Ⅵの記事は、違憲立法審査権についてのこちらの勉強不足が露呈した気がするが、適用違憲についての議論の精緻化の実益がどこにあるのかが良くわからなかった。

*1:14条との関係で問題にならないのかという気もしたが、最大判昭33.10.15刑集12巻14号3305頁からすれば問題ないのだろう。

*2:正直なところ、上三法よりもその他の科目の方が得点が取りやすかったのと、上三法の中でも憲法は時間をかけても得点につながりにくいという体感があったので、意図的に手を抜いたところがあったし、それは可処分時間が少ないところでは有効だったので、不勉強でもやむを得ないところなのだろう。褒められた話ではないが、合格してから使う機会もこれまでのところないし…。