時間をかける意味

同じことを繰り返して言っているような気もするが、一応呟いたことを基にメモ。

 

毎度おなじみNDAについて、例によって、スピード感重視の界隈の方々が諸々述べられているのを見た。

 

どういう契約であっても内容を見るのであれば、一定の時間がかかる。契約締結までの過程を技術的に早くしようとしても、所詮小手先の話という気もする。そのあたりの時間を掛けたくないなら、寧ろNDA自体を締結しないのが一番早いということになるはず(締結それ自体に別の意味があるのは別論で考えるべきだろう。情報の開示・受領とは直接関係ない考慮に基づくものだから)。

 

そうであれば、情報の層別をして、①何があっても開示しない情報、➁NDAよりもメリットのある取り決め(共同開発等)があったら開示する情報、③NDA締結で開示する情報、④なにもなくても出す情報、と区分して、その区分自体も定期的に見直して、④を増やすのがいいのではないかという気がする。情報の陳腐化のスピードが速いなら、NDAなしで開示可能な範囲も徐々に広がっていくはずで、そうであれば、NDAなしで開示可能な範囲をできるだけ広く考える意味で、前記の層別を定期的に見直す、ということが重要なのではという気がしてくる。

 

他方で、NDA締結で交渉が揉めるというのは、その揉め方によっては、そもそもさらに先の段階に進むべき相手ではないというスクリーニングにもなる場合がある。そういう意味で時間をかける価値があるという見方もできるかもしれない。いずれにしても揉め方の中身にも注意をしても良いのかもしれない。


結局のところNDAの肝は、秘密情報の範囲(定義)、秘密情報の受領側での共有可能範囲(外部への漏洩の禁止)、情報の使用可能範囲(目的外使用の禁止)というあたりになるのが通常のはずだから、まずはそこにこだわるべきで*1、その他のところはある程度妥協もやむなしという考え方もありかと思う。それにも拘わらず、メインの部分以外についての対応があまりにもかたくなということであれば、それ自体が、相手方のバランス感覚に問題あり、ということを示すことになるのではなかろうか。そういう相手と協業していくことが、先々で問題とならないかという視点もあり得ると思う次第*2

*1:規制業種の場合は、規制との関係でこれ以外のところにこだわる必要がある場合があることも事実だが、それは脇に置く。

*2:個人的な経験では、プロジェクトの入り口段階からもめる相手というのは最後までもめ続ける確率が高いように思う。