できるとかできないとかという問題なのか

相変わらずの謎な題名で恐縮だけど,つぶやいたこと+αでメモ。

 

某所での某言説について*1,某無双な方がエントリを挙げられている。

 

ronnor.hatenablog.com

 

こちらを引き合いに出していただいて*2,反論をいただいているのだが,そもそものこちらの意見がわかり易くないように思うので,以下補足方々思うところを。上記のエントリを読まれているという前提で書くので,読まれる際はご留意を。

なお,上記エントリと同様に,以下では,英語の問題は捨象する。また,以下では企業内で法務担当者(資格の有無は問わない)がレビューする場合を考える*3

 

まず,無双様のエントリは,ある意味,遠くを見据えた発言としては,一定の理があるのだろうと思う*4。他方で,エントリの内容は,頑張るとリソースが得られる蓋然性が相当程度あるという前提があるような気がする。そもそも頑張ったところでリソースが得られる見込みがないとか*5,リソースはともかく,適切なレビューができるだけの先が,そもそも適時に見つからない可能性だってある*6。誰かが内容を検討して判断をしないといけないはずのところで,法務担当者が判断を「逃げて」いいのかと気がしないでもない*7。契約レビューができないから,ビジネスをしないという話にはし難いだろう。

 

そういう状況においては,上記の遠くを見据えた話とは別に,現場レベルでの対応として,現時点でできうる限りのことをするという形でのレビューがあってもよいのではないか,それは,上記の話とは矛盾しないのではないか,と思うのでありました。もちろん,つけるべき留保文言はつけた上で,ということになるだろう。その意味で,無双様の上記エントリがエアリプしている先については,賛意を表する余地が十分にあると思うのでありました。

 

とはいえ,そのような発想で立ち向かうにしても,無双様のエアリプ先の記載については,もう少し学ぶべきものがあるのではないか,と感じたのも事実。自分たちを半端とかなんとか言い訳をしている場合ではないのではないかと感じる次第。

 

とりあえず,アメリカ法というざっくりした法域で考えるとしても*8,確かに,弘文堂アメリカ法ベーシックはアメリカ法についての理解を深めるうえで有用なことは間違いなく,その中のアメリカ契約法,は契約法についての理解を深めるうえで,有用な本だと思う*9。しかし,あの本の最後にあるように,そもそもLaw Schoolで学ぶ契約法の全体をカバーしたものとは言い切れないし,仮に全体をカバーしていたとしても,Law SchoolのContractsの授業を学んでもドラフティングについての技術が習得できるものでもない以上,いずれにしても,上記の目的との関係では,不十分だろう。

 

こちらが目を通した範囲*10でいえば,アメリカ契約法という意味では,樋口アメリカ契約法は必須とは思うが,それでは足りず,和書であれば,少なくとも,次の各書も紐解くべきと考える。平野本は2冊セットで読むべき。

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また,米国での訴訟との関係ではこちらの2冊も必須だと思う。

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なお,文例集としては,某大辞典も悪いとは言わないが,高くて,重くて,かさばるので,個人的にはこちらを推奨。

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…というわけで,適切な留保を置きつつ,頑張ってみるのも,時として「アリ」なのではないかと感じるのでありました。

 

追記)無双御大の冒頭にリンクしたエントリの追記で,本エントリへの感想をいただいておりますが,当方に対する評価には,過分なものがあると思われます。ともあれ,そのような評価に見あう能力を兼ね備えられるよう,日々精進したいと思います(汗)。

 

*1:原発言をされた方にご迷惑をおかけする気はないので,敢えてリンクなどはしない。こちらがRT等した中に含まれているのは事実。仮に,原発言をされた方にご迷惑をおかけしたり,ご気分を害するようなものがあれば,予め心よりお詫びする次第である

*2:そもそも僕ごときが偉そうに意見を述べられる立場なのかについて深刻な疑義を覚えるが,そこは一旦棚上げしておく。

*3:なので,こちらの発言は,元「中の人」としてのそれとご理解いただきたい。なお,外の場合は異なる考慮があり得ることも付言しておく。

*4:個人的には初職の本社法務では契約書は基本的にレビューせずに,事業部門の契約担当が見るという前提のところだったので,契約審査と法務部門の存在意義との関係性は正直ピンとこないのだが…

*5:そのあたりの判断も経営判断ではあるわけだが…経営判断原則の下で保護されるかどうかはさておくとして…

*6:中近東とか南米,アフリカあたりはまだ厳しいのではなかろうか。ましてや予算制約が厳しいとなると余計に

*7:「逃げ」という表現が適切かどうか疑義があるが,他に思いつかないのでこの表現をとりあえず使っておく

*8:アメリカ以外の法域についても,JETROのページにある情報や,英語でよければ,世銀などに有るdoing business in ***で,その国の法規制一般についての情報を集めることができるなど,インターネット上の情報を,使い方に注意しつつ使うことで,得られる情報があり、それらに基づき内容を検討することもあり得る対応だろうと思う。

*9:前に書いたかもしれないが,いわゆるバーゲン理論については,内田貴,契約の再生での解説が秀逸だと思う

*10:買ったけど目を通せていない本で考えると,アメリカ法ベースの本とは言えないものの,「英文契約の考え方」も,目を通すべき本だろうし,売買契約についての本では有るが,「米国法適用下における商取引契約書」も同様に目を通すべき本ではないかと感じている。