ジュリスト 2026年 1 月号

例によって呟いたことを基に、目を通した範囲の感想を箇条書きでメモ。

  • 内心の自由」の憲法論の書評は、対象書籍の核心と思われる部分の意義と問題と思われる部分の指摘が興味深い。
    法律実務家のための特許の基礎知識の藤野先生の書評は、冒頭の本を読む時間と心の余裕の必要性の指摘からして、こちらに刺さる内容。後者がなくて本が読めない時間が続いたのが今年後半なので。対象書籍における単著の利点の指摘も納得するところ。
  • 海外法律情報。
    アメリカの学校選択のための連邦税額控除。初中等教育は州および地方自治体の責任なのに連邦での税額控除制度になるという連邦と州以下との役割分担が興味深い。
    ブラジルの子の返還拒否自由とDVに関する連邦最高裁判決は、抽象的違憲審査制度に基づくもののようでそこが興味深く感じた。
  • 判例速報。
    会社法の議決権の代理行使における株主本人確認方法は、これで争いになるのか、と事実の記載を見て驚く。
    労働法のヘアカット専門店を運営する会社の「エリアマネージャー」に雇用される理美容師らと会社との間の法的関係は、形式論で判断しているように見える判旨への解説での批判に納得。
    独禁の景表法の不実証広告規制に基づき優良誤認表示とみなして行った措置命令の取消請求を認容した事例は、表示の意味内容の認定方法の判旨が興味深く感じた。
    知財の存続期間が延長登録された医薬用と発明に関する特許権の効力は、これまでの判決で明らかになった点を踏まえての本判決の意義の説明が分かり易く感じた。
    租税の一体の土地建物を取得し、建物につき1年3カ月間賃貸した後に除却した場合の除却損と土地取得価額算入は、スキーム全体を見ると判旨のようになるのも納得という感じか。
  • 連載/民事訴訟手続のデジタル化のこれからのフェーズ3における運用の検討(5)—ウェブ尋問①は、規程上はかなり条件をつけたうえでウェブ尋問を認めているように見えるけど運用がどうなるか気になった。
  • 連載/地方創生に向けた官民連携の法実務は総括—官民連携と地方創生の今後を見据えて。民間事業者側の向き合い方へのコメントが示唆に富んでいる。
  • 時論の自立支援給付と介護給付の支給調整に関する一考察は、「社会観念(通念)審査」に「判断過程審査」を組み合わせる最高裁の判断枠組みが興味深く感じた。
  • 連載/広報と法務の危機管理広報(2)
    —総論(2)は、欧米由来の理論の日本の状況への適用が興味深く、踏み込み方についての解説は、納得感が高かった。
  • 特別企画/成年後見法理論の現状と展望の成年後見法理論の現状と展望—総論は、考えたことのない分野の話で面白いと思って読む。任意後見の法律関係の二重性は考えたこともなかった。
    成年後見人の財産管理における権限と義務—親権者との比較を通じては、比較自体はありうると思うけど比較の仕方に疑問。能力が成長していく過程の未成年に対し、成年被後見人は能力が長期的には衰えていくと思うのだが、その辺りの勘案の仕方に疑問。
    成年被後見人の人格的利益の保護は、そういう問題があること自体認識していなかったので興味深く読む。立法で解決すべき話と感じた。
    民法成年後見法の観点からのコメント—コメント1は、最後に指摘されている民法典の再編に関する指摘が一番興味深く感じた。スケールの大きな話と感じた。
    民法家族法の観点からのコメント—コメント2は、こちらの石綿論文への違和感にそう内容があってなる程と思いながら読む。
    この特別企画は、個人的にはあまり考えたことのない内容でかつ話が想定以上に大きな内容を含んでいて読んでいて面白かった。
  • 時の判例道路交通法72条1項前段の件(詳細略)は、結論は被告人に酷な気もしたが、法の趣旨からすればやむなしと感じる。
  • 判例研究。
    製品差別化の程度が不明確な商品を対象とした再販売価格の拘束事件は、評釈での違反行為の終期に関する指摘になるほどと思う。
    仮処分に違反して開催された株主総会の決議の効力は、評釈での判旨批判のうち、仮処分の効力についての指摘には納得。
    一人株主による株式譲渡と取締役会決議無効確認の利益は、評釈での訴えの利益についての指摘になるほどと思いながら読む。
    保険金の過誤払にかかる不当利得返還請求の可否は、先行する裁判例と比較しての判旨批判に説得力を感じた。
    継続雇用契約の再締結時に提示された労働条件の不利益変更と雇止めは、評釈最後での使用者の裁量に関する判断についての指摘に納得。
    ビルの設備管理員に対する「1か月単位の変形労働時間制」の適用の可否と、未払とされた時間外割増手当の計算方法は、変形労働時間制を運用するなら規則を決めて厳格に運用しないといけないのだろうと感じた。
    請負契約による減価償却資産の取得時期と仕入税額控除の課税仕入れを行った日は、税金の種類ごとに資産の取得時期等の時期が異なることがありうるというには論理的には理解できるが納税者に分かりにくいのではないかと感じた。
  • 特集は会社法の20年とこれから。
    冒頭の藤田先生の文章では、後に続き各論文の紹介。
    上場会社法制の課題—会社法金融商品取引法の調整と連携は、開示の一体化には個人的には賛成。両方の不整合による不利益を会社側に付け回すべきではない。議決権停止についても、賛成。両方の目的の差異を強調しすぎではないかとも感じる。
    会社及びガバナンスの目的は、昨今の状況を踏まえた今後のあるべき会社(公開会社)のガバナンスを検討したもの。「経営者の側もステイクホルダーのもたらす経営資源の重要性や短期的分配と長期的企業価値の関係を適切に説得しきる技量と胆力が必要である」との指摘は確かにそうだろうと思う。
    株主総会の未来は、会議体としての株主総会の在り方を考えるもので、個人的には以前の法学教室での原稿に引き続き、読んでいて面白かった。個人的には決議取消のリスクの負担を軽減する意味では事前の議決権行使の結果次第で総会前に決議成立を認める案が成立するかが気になる。
    株主アクティビズムと会社法は、こういうバランスのとり方になるのかなと思いつつ読む。会社の中の人視点で見ると現状はバランスが良くない気がするのは確か。
    上場会社における取締役会の変容は、所謂モニタリングボード化への経緯と展望というところか。モニタリングボード化では、業務に関する細かい知識の面で社内に劣後するであろうボードとそのボードにモニタリングされる側との役割分担の明確化がいると思うがそのあたりに触れられていないのが興味深い。
    組織再編法制の展開と課題は、検査役の設置に伴う負担の大きさが問題のようにも見えたけどそれが実務上どのくらいの重さなのかがよく理解出来ていないので肚落ちしない感じがした(汗)。
    グループ・ガバナンスは、親会社と子会社の関係性が多種多様であり得る以上、効率的なグループ運営に向けた子会社管理の選択の幅は広くならざるを得ないのではないかと感じた。
    同意なき買収と防衛策は、最近の状況と展望が分かり易かった。MOMについて脚注23での指摘に納得。
    M&A条件の公正は、裁判所がどこまでの審査ができるか、ということを踏まえた規律が形成されるべきなのだろうなと感じた。
    特集は、錚々たる面々が書かれていることもあって、読みごたえがあった。