若い人の業務負荷の調整について

何のことやら。管理職視点で呟いたことを基に雑駁なメモ。

 

年次の若い企業内法務の担当者の方が、依頼に対する回答について社内で標準対応日数が決まっているものの、それよりも急ぎでの対応要請にどこまで対応すべきかというようなお悩みを呟かれているのに接した*1。こちらは、世間でいうところの法務部長(課長兼務)なので、その視点から思うところをいくつか述べてみる。

 

依頼者の中には相応の管理職の方も含まれ得ることからすれば、業務負荷の管理については、担当者本人が全部責任を負う必要はないだろう。場合によっては、依頼されるものの中には、そもそも対応すべきではない案件や*2、対応するとしても別の担当者が対応すべきものもあるだろう*3。その辺りの整理は管理職がすべきだろうし、安全配慮義務を持ち出すまでもなく、部下が「壊れない」よう管理するのが管理職の仕事であるのは争いのないところだろう。仮に管理職がいわゆるプレイングマネージャーとして、自身が担当者として動くべき案件があったとしても、それらよりも管理の方が優先されるべきだろう。自分が対応する案件に「逃げ込んで」、管理職の職責を果たさないのは論外というべきだろう*4*5

 

仮に、上記の点を別にして、担当者レベルで判断をすることが必要な場合、どういう考え方で対応するか。個人が投入できるリソースに制限があるところで、優先順位をどうつけるかという話になるだろう。

 

その意味では、まず、なぜ、その部署・担当者の依頼を他の依頼に優先して対応しなければならないのか、という点を確認する必要があるだろう。他の方から別途的確なご指摘があったが*6、急ぎを優先させるとなると、期間の余裕をもって適式に依頼をしてきている部署が割を食う結果が生じるわけで、それを正当化する理由は何か、ということになる。割を食う部署からの正当なクレームにどう説明するのか、という問題が出てくるからである。また、仮に何らかの正当な理由があったとしても、それを理由に社内ルールの類を捻じ曲げることをどこまで許容できるのか、という点も別途考慮の対象にすべきなのだろうと思う。

 

その次に訊くべき問いは、優先しないと具体的に如何なる不具合が会社全体に生じるのかということになるのではないか。ここでのポイントは、具体的なリスクを訊くこと、と、会社全体に対するリスクを訊くことだろう*7。抽象的に困るというのは誰でもいえるし、依頼者個人・依頼部署自体に不利益が生じることは、ある意味で基本なので(それらすらないようであれば、そもそも安心して無視できるはず。)、それら以外に何があるのか、を訊くことになる。リスクベースで考えて優先順位をつけるという発想はあり得るだろう。

 

さらに、その際には、依頼者本人及び部署の帰責性を勘案することも想定できるだろう。自部署で先方から来た案文を寝かせておいたような手合いは、自分でその責任をとるべきだろうから。

 

もっと極端なやり方として思いつくのは、急ぎで対応する様言い募る相手に対しては「その依頼に応じないと誰か死にますか?」と訊いて、Yesという具体的な答えが出ないなら、無視する、でもいいのかもしれない。Yesという答えが出るとしても、相当に説得力のある回答が出てこない限りは、せいぜいハッタリだろうから、無視してもよいのではないかとも思う。

 

追記)上記の内容を基にスペースで若干のお話をした。お付き合いいただいた経文緯武先輩ありがとうございました。#裏萌渋 でtwitter上で探すとその内容をある程度把握可能である。例えばこのあたりとか。

*1:ご迷惑をおかけする危険を避けるためにここではリンクなどはしないでおく。なお、本エントリの内容は、純粋にこちらの主観によるものであり、文責はこちらにのみあることも付言しておく。ついでにいうと、当のご本人に改善すべき点(単に教わっていないだけみたいな部分も含めて)がないかというと、それはそれで疑義無しではないのだけど、そこはここではいったん脇に置いている。

*2:例えば自社との利益相反が絡むものは相談自体に応じるべきではなく、別の相談ルートを紹介する以上のことはすべきではないだろう。

*3:既に別途他の人間が対応中というようなケースが想定可能だろう。

*4:少なくとも僕はそう思っている。「自分の案件」があると、「他人の案件」への注意がどうしても落ちるというのが個人的な経験則なので。

*5:そもそも本当に緊急度が高ければ、「平」に行くのではなく、役職者に行くのが筋だろうと思う。

*6:ご迷惑をかけるのを避ける趣旨でこちらについてもここでリンクなどはしない。

*7:ここで考えるべきは、企業内法務の依頼者は目の前にいる特定の依頼者ではなく、企業全体であるという点だろう。