生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真

先日掲題の写真展を見に行ったので感想をメモ。写真に関心があるなら見に行って損はない展覧会と感じた。

 

安井仲治という写真家は第二次大戦中に亡くなっていて、要するに相当前の世代の写真家なのだけど、森山大道さんの著作*1の中で、絶賛していることもあり、一度作品をまとめて見てみたいと思ったので、今回の写真展の情報に接したところで見に行ってみた。

 

今回は氏の写真の回顧展で、写真家として活動した期間は20年程度のようだけど、その活動期間の全容を示す形だった。200点以上の展示のうち140点が当時プリントされたもので、そのほかにネガやコンタクトプリントからの調査で制作されたプリント*2が展示されていた。複数のネガから一つの作品に仕上げているのを、元のネガを探し出して、このネガのこの部分をこう使って、この一点に仕上げているという解析がなされているのもあり、制作過程が推測されて興味深く感じた。

 

一通り見てみると、当時の先進的な*3表現を取り入れて、自分のものとして、風景写真やスナップ、ポートレート*4だけでなく、ドキュメンタリー的な組写真*5、コラージュ、自分で静物を組み合わせて撮った作品(半静物)等、多彩な作品を残していて、当時の技術的制約の中でではあるが*6、写真表現の可能性、写真の自由さを確かに示しているというべきところで、現代の写真家たちからも絶賛されるのも、納得した*7

 

こういうかなり力の入った大規模な回顧展は、そうそうできないだろうから、氏や日本の写真の歴史に関心があるのであれば見ておくべきなのだろう。

 

最後に、作品のチラシ2種と入場時にもらったポストカード。

それと会場の東京駅ステーションギャラリー近辺にあったこの展覧会のポスター等

ついでに東京駅ステーションギャラリー側から見た東京駅のコンコースも貼っておく。ここに来ないとこの角度からの眺めは得られないはず。

 

 

 

*1:「仲治への旅」という一連の文章も書かれていて、その辺りで僕は安井仲治の名前に最初に接したと記憶している。

*2:今回の展覧会のために作られたものもあったようだ。

*3:今見るとうーん、と思うものもあるが

*4:熊谷守一氏のポートレートは、氏の晩年の写真しか見たことがなかったので、若い!と感じた。

*5:流氓ユダヤがそれだが、昨今のあれこれを考えると、感慨深いものがある。

*6:当然のことながら、銀塩写真しかもモノクロしかなく、フィルムの感度もそこまで高くはなかった。

*7:他方で時局柄撮る羽目になったと思われるものもあって、この辺りを氏が自分の中でどう折り合いをつけたのかは少し気になった。