拙速にならないか

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法令の英訳、AIに活路 迅速な公開で対日投資を呼び込め 法務省:朝日新聞デジタル

 

法務省は、法令の英訳にAI(人工知能)を活用する取り組みを始めた。これまでは英訳の公開に平均で約2年半かかっていたが、AIを活用し、重要法令の公布・改正から「1年以内」での公開をめざす。英訳を迅速に公開することで国際取引を円滑化し、海外からの投資を呼び込むのが狙い。来年度には、全省庁に広げたい考えだ。

法令の英訳はいうほど簡単ではないこともあっって、日本法令外国語訳データベースシステムの整備はなかなか進んでおらず、こちらのこれまでの職歴においても、業務上困ることがなかったわけではない。

 

今年度、研究機関や民間事業者と共同で、法令翻訳に特化したAIのシステムを開発し、昨年12月から試行している。長い法令でも、数時間程度で精度の高い英訳の原案を作れるようになったという。来年度には、これまでの倍以上にあたる320本の法令の公開をめざす。

しかしながら、じゃあ当節流行りのAIを使えば、迅速にできるのかというとどうだろうか。中途半端に「公式」めいた翻訳があると却って有害なのではないかという気もする。法律英語としてどうか、ということを考えて翻訳がなされているわけではないので、どこまで「使える」翻訳ができるのか、疑義なしではないように思う。もちろん「下訳」めいたものは迅速にできるだろうが、そこから「使える」ものに仕上げる手間はどうか。ここは最後は人力でのチェックがいるだろう。その辺りを担える素養のある人がどれくらいいるのかというあたりで結局律速してしまうのではなかろうか。

 

それと、そもそも、仮に法令の英訳があったからといって、それで投資が呼び込めるというような単純な話だろうか。必要条件の一つではあるだろうが、それだけでどうにかなるような話でもないように思う。

 

さらに、こういう話に接すると、以前某元法務省参与が、債権法改正の中間試案のころに、英訳を発信してアジア共通法策定の過程に存在感を、みたいなことを言っていたのが脳裏をよぎる。現行法の英訳すら十分に整えられないところで何を言っているのか、出来もしないことをそうと知りつつ、耳障りの良いことを言っているだけではないのかということを感じたのを思い出す。そのころからどこまで進歩が見られたのかはわからないが、今回もまた同じようなことになるのではないか、という懸念を覚える。それなりのものがあれば便利なのは確かなので、そういうことにならないことを祈りつつ、推移を見守ることにしたい。