掲題の映画を観たので感想をメモ。The Beatles、中でもJohn Lenonに関心がある向きにとっては見ておいて損のない映画。
(以下一部ネタバレを含む。)
この映画はJohnの生い立ちから、The Beatlesとして売れるようになるまでの間の辺りの話に絞って、彼の同級生たちの話や、彼がその頃過ごした場所の取材などからなるドキュメンタリー。パンフレットに拠れば撮影は2017年とのことで、1940年生まれのJohnの同世代の関係者の話を直接聴くにはおそらく最後のタイミングだったのではないかと思う*1。
細かなディテールの積み重ねから、浮かび上がってくる若き日のJohn Lenonの姿は。Love and peaceなどで語られるような「意識高い」系ではなく、皮肉屋で音楽に夢中なガキ大将というところ。The Beatles時代の彼もそちらのイメージなので、納得しやすい*2。
10代の頃からThe Beatlesの音楽はそれなりに聴いてきていて*3、それなりに彼らの周辺知識も得ているところではあるが、売れるようになる前の話については、それほど知らなかった。Johnの生育環境が複雑だった(叔母夫妻が主に育てていた、実母が早逝した)こともある程度は認識していたが、こちらがイメージしていた以上に「難儀な」環境だった*4。彼がある種の傷を負ったであろうことは想像に難くない。こういう映画を観た後では、彼の歌の聴こえ方も変わるかもしれない。最後に流れる、若い人による"Help!"のカバーも、Johnのオリジナルのゆったりとした感じに寄せていて、彼の悲痛な心の叫びにも聴こえてくる。
この他、印象に残った点をメモしてみる。
- 彼らの生まれたリバプールがどういう街だったかという説明。港町で外に向かって開かれていたという程度しか知らなかったが、アイルランドとの関係や、見下されていた感があったあたりとかの指摘は興味深かった。
- 個人的に一番印象的だったのは、やはり、JohnとPaulが出会った日のことを、実際の場所で解説するくだり。20世紀の音楽の歴史上特筆すべき日だったことは間違いないだろう。
- JohnのCynthiaへのDVについてのくだりは、賛否両論あるかもしれないが、変に聖人化されるのを防ぐ意味では触れるのが適切と感じた。
- Johnの母親Juliaの交通事故死を目撃したJohnの友人の話は貴重ではあるのだが、何とも言えない気分になる。
- 個人的には、ハンブルグ時代のメンバーStuwart Stucliffeの恋人Astridの声も含まれているのも印象深かった。彼女がBeatles初期の所謂マッシュルームカットを彼らに広めたとされているので。
上映の後に、字幕を監修したピーター・バラカン氏のトークショーがあった。上映前に氏とすれ違ったが、思ったよりも小柄だった。声はラジオで聴くのと同じだった。Johnよりも10歳若いロンドン出身の氏から見たリバプールというあたり(関東と関西程違うし、ロンドンからすれば寒くて天気も悪くて行く気にならないとのこと)も面白かった。
最後に写真を何枚か貼っておく。席が後ろの方だったので、トークショーも携帯のカメラのズームを使って撮ったこともあり、まともに撮れていない(言い訳)。パンフが折れてしまって、縦線が入ってしまった(汗)。