最近の素朴な疑問

何だか良くわからないけど自分用のメモ。

 

勤務先のNDAの雛型を見直すことを考えていて*1、いくつか書籍での例を見ていて、疑問に思ったのでメモをしてみる。なお、以下では、所謂ファブレスでないメーカー間での秘密情報のやり取りを想定している。

 

NDAにおける「秘密情報」の定義について。一例として次のような例を見てみる*2。強調部分を見て、気になった点があるのでメモしておこうかと。

1 本契約において「秘密情報」とは、本目的のために、本契約に基づいて情報を開示する当事者(以下「開示当事者」という。)から本契約に基づいて情報の開示を受ける当事者(以下「受領当事者」という。)に対して開示される次の各号に定める情報、並びに、本契約締結の事実及び本契約の内容をいう。
(1)有体物(書面、電子メール、電子ファイル、試作品等を含む。)で開示される場合には、開示の際に開示当事者が秘密情報である旨を明示した情報
(2)口頭又は映像など無形的な方法で開示される場合には、(i)開示の際に開示当事者が秘密情報である旨を明示し、かつ、(ii)当該開示の時点から10営業日以内に開示当事者が受領当事者に送付した秘密情報である旨を明示した書面に記載された情報

 

強調部分のような文言は入れておかないと、メーカーの場合、工場見学でみたものとか、口頭での議論などをNDAの保護の対象となる「秘密情報」に含めることが出来なくなりかねない。双方の技術者同士の議論になった場合とか。そういう議論がなされることにより、協業が促進される可能性があるので*3、議論自体を禁じるのは非現実的といえる*4。そのために、この種の文言は必要となる。

 

気になるのは次の2つ。

1つ目は、上記の書きぶりだと、開示時点で「秘密情報」である旨を明示する必要があり、裏を返すと、開示当事者側が開示しようとする情報が「秘密情報」であるかどうか、判断できなければならないはずである。それがどこまで貫徹できるのか。開示するのがエンジニアのような方々の場合、そういう方々にそこまでの弁え(リテラシーというべきか)を求めることができるのか。教育とかで対応しきれるのかという点で疑問が残る。

 

2つ目は、仮に、前記の点が心もとないと仮定した場合、(2)の(i)を削除することも考えれる*5。その場合は、そこで指定された情報はいつの時点から「秘密情報」になるのだろうか。書面の到達時になるのだろうが、到着を争われたらどうなるのか*6
こうした文言は前記の必要性があることから、指定までの日数を限定することでリスクを極小化して、規定を正当化しているのだろうが、やや気になった。

 

・・・特に結論はないのだが、気になったのでメモしておく。

*1:またNDAかとか言わないように。

*2:重冨貴光 著 酒匂景範 著 古庄俊哉 著『共同研究開発契約の法務〈第2版〉』(中央経済社、2022年)20頁からコピペして体裁をこちらで整え、強調もこちらで付した。

*3:そうなった方がビジネス上有益な結果が生じやすいことは言うまでもない。

*4:したがって、法務部門に審査などの依頼が来る際に、こちら側から開示する情報がないという話であっても、議論の結果予測に反して開示をしてしまう可能性も想定する必要があり、その意味では原則は双方開示の形を取るのが無難と考える。

*5:こうしたアプローチとは別に、認識可能な情報は一切合切秘密情報に入れるという規定の仕方も見たことがある。それはそれで何が認識可能なのかということが議論になって、面倒になる気がするので、個人的には修正することを心掛けているが。

*6:インターネット経由でも、メールであれば、届かないまたは届くのが遅れることがあるので、その手の手段での対応も完璧といえないのではないかという気がする。