灰色吐息

呟いたことを基に脊髄反射的なメモ。

 

グレーゾーン解消制度において、AI契約書レビューが弁護士法72条との関係でグレーの可能性ありという答えが出たことで、特定方面で話題になっているのに接した。制度の濫用だという意見にも接したが、グレーという判断が出ることで、判断を踏まえて改善を図ることで、その結果としてグレーという状態を脱するという形もあり得る以上、グレーという答えが出ること自体が不当とまでは言えないだろう。

 

今回のような問題については、もともと疑義は呈されていたわけで*1、それにも拘わらず、殊更に役所の見解を取りに行こうとするのであれば、その疑義を払拭できるだけの「仕掛け」、例えば、前提条件を相当絞るとか、そういう話が必要だろうし、そういう話をするとなれば、事前のすり合わせもいるはずで、その辺りが足りなかったとすれば、今回のような判断になったとしても、不思議はないように思う。すり合わせをしているのであれば、レターが実際に出る前に草案を示されるなどして、レターが出ないようにする道もあったのではないかと推測するが、それにも拘わらず出すに至ったのはどういうことなのか、疑問は残るところである。

 

個人的には、外資の時に、ある件で名乗らずに某中央省庁に問い合わせをしたところ、詳細を訊かないと判断できないと言われたので、親会社で進め方についてお伺い立てたところ、訊くのはやめてくれという指示が来たことを思い出す。今回の制度に限らず、役所への訊き方次第では、藪蛇になる可能性は常にあるものと考える。だからこそ、実名で訊くのであれば、どういう回答が出ても文句を言わない覚悟をするか、こういう回答しかでない、という風に決め打ちができるまで訊き方などを詰めたときか、いずれかになるのではないかと思う(残念ながら後者が出来たことはないが)。もちろん、いきなり直接訊くことはせずに、外部の弁護士さんに名乗らずに一旦訊いてもらって、感度を探ってみるところから始めて、すり合わせをしていくのがよいような気がする。

 

本件については、かの業界に近いと思われる先生方が、特定の問題でグレーという判断が出たこととグレーゾーン解消制度の悪用とは別の問題であるはずのところ、両者を混同しているかのような呟きをされたり、本件について陳情にいくべしというような呟きをされているのに接した。前者については、理解に苦しむし、後者については、最初から理屈で説得することを放棄するかのような言動は、敗北主義的というか、クロであることを認めることにならないかという疑念を覚える*2

 

また、関係業者から、本件はこちらとは関係ない、この見解が出ても、こちらのビジネスの適法性には影響しないというリリースを出しているのにも接したが、適法性には影響しない、というのは、適法性がある場合にもない場合にも等しく妥当するはずなので、そういうリリースしか出せないのもどうなんだという疑問を禁じ得ない*3

 

個人的には、所謂リーガルテックは、まずは判例・文献のデータベースからというところなので、これらの技術と接点を持つのはもう少し先だろうと思うが、何だかなあとため息をつく次第。

*1:松尾先生の論考でその点の指摘があったのは記憶に新しいのではないか。

*2:さらに弁護士の先生方が、我々が使って問題がないのだから、とかいうのにも接したが、弁護士が使って問題ないというのは、使わずともアドバイスができるだけの能力があるからそうなっているにすぎず、そうでない人間が使ってどうかというところが問題となっているところでは、意味のない言説に見えるのだが...。

*3:某法力については、こんな話よりも、強引でイマドキでない営業スタイルの方がよほど有害で悪影響を及ぼしていると思うが。