法哲学入門 (講談社学術文庫) / 長尾 龍一 (著)

 

法哲学の分野の入門書で古典とされる一冊。以前TL上で話題に上がっていて気になっていたので、先日ブックオフで買ってみて、一通り目を通したので感想をメモ。この分野に関心があれば読んでおいて損はないと思う。

 

理解できたかどうかはさておき(汗)、まず読み物として面白い。講談口調とでもいうべきか、軽快な、肩の凝らない調子で話が進み、相対的にわかりやすい話が気がつくと、法哲学の話につながっている(と思われるけど、正直なところこちらの理解力ではそう言い切れるかどうか自信がない)ので、引き合いに出している卑近な事例が古くなりすぎていることを割り引いても*1、総じてとっつきやすい本といえる。

 

個々の表現を見ても、含蓄に富んだものが多く、折々に読み返すことで、得るものがあるのではないかと感じる。その意味では、長く手元においておくべき本という印象を持った。

 

入門書ということであれば、僕は、「その次」への道案内があってほしいと思うが、本書では、そういうものがない(もっとも、仮にあったとしても古すぎて現時点では機能しない可能性もあるだろうが)のが惜しまれる気もする。とはいえ、本書のように、著者個人の個性が強く出ている本だと、とってつけたようにそういうものがあっても違和感があるかもしれないが。

*1:特に最終章の「現代社会」についての記載は、古色蒼然という感があるのは否めない。原本が40年近く前のものであることを考えればやむを得ないのだが