一通り目を通したので感想をメモ。個人的には知的財産法を学ぶうえでは、手元に置いておいて損のない一冊と感じた。
本書を手に取ったのは、戦士さんのこちらのエントリに接したから。
k-houmu-sensi2005.hatenablog.com
いつもの戦士さん節による熱いご紹介ー作り手の熱意にまけないものだと思うがーを読めば、こちらが何かを付け加える必要はないとは思うが…*1、当方の目から見た感想をいくつかメモしてみる。
「はしがき」にある
知的財産法という科目は、文章による説明だけでは十分に伝わらないことも多く、発明や著作物の写真などを見てもらわないと説明ができないこともたくさんあります。
というのは、そのとおりで、書籍を読んていても、図版とかがあればいいのに、と思うこともままあったので、こういう形で図版がふんだんに使われている本があると、特に学習の入り口段階では、理解を進めるうえで有用だと思う。もっと早くこういう本があったら、と思った次第。
もっとも、こういう本の有用性は想像に難くないのに、実際にはなかなかなかったのは、写真とかは権利処理をするのが大変で、図示するのは誤解のないように作るのが大変だから、なのだろう。それにも拘わらず、ここまでの形にまとめ上げられたことについて、関係者の方々の努力に素直に敬意を表したい。相当な熱意があったからこそ、出版までたどり着いたのではなかろうかと思う。
もう一つ個人的に印象的なのは、最近耳目を集めた事例もこまめに拾っているところ。こういうところは、とっつきやすさという点で違ってくると思うので、普段法律に縁のない読者との関係では重要だと思う*2。
そういうわけで、賞賛すべき一冊ではあると思うし、今後も継続的に改訂してほしいと思うのだが、贅沢を承知で、個人的な尺度でいくつか気になったところがあったので、ついでにメモしておく。いずれについても本書の価値に影響するものではない。
- 写真が小さくて見づらいものが一定程度あった。価格を抑える*3観点から紙幅を減らす必要があってのことと思うので、やむを得ないとは思うのだが。
- 色についての商標の解説のところのように、そもそも図版が白黒だと厳しいというのもあった。いっそのこと図版なしの方がよくなかったかという気もした。
- さらに細かいことだが、不競法について、2条1項各号については、3号についての解説だけが省略されているのは、残念な気がした。紙幅とかの関係で難しかったのだろうけれど。