著者の西田先生からご恵投いただいたもの。ありがとうございました。
弁護士業(NOTから官庁出向を経て独立)と並行してキャリアコンサルティング・ヘッドハンティングに従事されているご経験から弁護士の就職と転職について書かれた本の改訂版。
一読して思ったのは、就業経験なく学生から弁護士になられる方であれば、想定されるキャリア上のシナリオをある程度網羅的に書かれていると思われるので、目を通しておくべきだろうということ。いずれのキャリアを採るにしても、将来についての予見可能性を向上させることになると思うので。
弁護士をめぐるマーケットの状況の分析や弁護士としてのライフステージごとの生存戦略の分析は、上記の立場で長らくマーケットを広くご覧になられている経験が反映されていて、読みごたえがあった*1。
他方で、就職活動に関するアドバイスは、ご自身の立場もあってか、やや微妙な印象が残った。これらの点については、二次妻・無双御大こと、@ronnorさんが既に的確に指摘しているところ。
西田章『新・弁護士の就職と転職』は面白いところもあるが、いわゆる「マニュアル本」として、記載に薄っぺらさがあることは否定できない。そういう意味で、そこに書いている事をそのまま疑問を持たずに鵜呑みにするのは良くない、というか鵜呑みにするパーソナリティを採りたいかというと...。 #読書
— QB被害者対策弁護団団員ronnor (@ahowota) 2021年1月14日
また、書かれていてもよいはずのところで、あまり触れられてないと感じたこともあった。
一つは危機管理についてのもの。色々な意味でストレスのかかる職種ということもあり、うまく行かない事例はそれなりにある。その意味で、一旦何かがおかしくなったときの危機管理は重要なところ。この点については、二次妻・無双御大こと、@ronnorさんの#杉原千畝プロジェクト、が参考になると思う。逃げ方、逃げるべきタイミングを視野においておくことは重要だろう。
次に、これは恐らく西田先生が接する層が5大とか渉外系の優秀な方々がほとんど*2であるからかもしれないが、所謂「優秀層」に向けた内容とも読み取れ、何らかの点で「優秀」でない場合に、どういう就職・転職が可能かについては、多くのことは読み取れなかった(無闇に動いても、不合格が重なるだけなのでお勧めしないという記載はあったが)。
最後に、僕も含め、日本の弁護士以外の職歴を経験してから日本の弁護士になる場合に、どういう戦略があるのか、ということはあまり書かれていない。この点は、個別具体的な要素が強いことが推測され、そうそう書きようがないとは思われるから、本書の価値を下げるものではない。このあたりは、個人的には今後の改訂に期待したい。