搾取される研究者たち 産学共同研究の失敗学 (光文社新書) / 山田剛志 (著)

ブックオフで衝動買い。

産学共同研究で、「割を食う」目にあっている研究者の方々のレポートというところなのだろうか。著者が法学研究者兼弁護士ということで、そういう方々のサポートされているとのこと。

 

当然のことながら守秘義務の関係で、記載されている事実関係には多少の調整が入っているとしても、なんとなくありそうに見える話が続き、著者が対応して助けになったり何もできなかったりというのが(ある意味当然のことではあるが)、何ともリアルな感じがした。

 

共同研究の際の、企業側との関係の持ち方が適切でない点については、研究者側が世慣れていないだけのようにも見えてしまったが、そういう状態のまま放置されることそれ自体が適切ではないので、ご本人がある程度リスク要素に対する感度をもちつつ、必要に応じて適宜専門家(弁護士とか弁理士なんだろう)に相談できる体制があるべきなのだろう…。他人事めいて恐縮だけど*1

 

あと研究室内でのパワハラなどについては、教授職が研究室内で権力を持つ構図が宿命である以上、その立場にたつ人は、立場の権力性に自覚的でないとマズいし、そこは教育の問題だろうと思う。それとともに、そういう立場であっても、周囲からのプレッシャーなどに耐えられないときには、きちんと「悲鳴」を上げて、それにより何らかの助けの手が差し伸べられるべきと感じた。このあたりも弁護士など(法律面だけではないだろうが)の専門家の出番なのだろう。

 

あともう一つ思ったのは、本書で描かれているような状況を現出した政権の施策がやはり適切ではなかったのだろうということ。このあたりについて、きちんと総括がなされるべきと思うが、現状ではそれを期待するのは難しいのだろう…。

*1:研究者が研究に専念できるようにサポート体制を整えるというのだと、その体制が十全に機能しないときに研究者を無防備にしてしまう危険があるので、研究者自身に一定の素養を求めるべきなのではないかという気がする。