IPのつくりかたとひろげかた (星海社新書) / イシイ ジロウ (著)

近所の本屋で衝動買いしたもの。読みやすい文章で一気に読めた。

 

まず最初に留意すべきは、タイトルでいう「IP」は、法務・知財クラスタが考えるそれとはやや異なっているところで、知的財産としての価値のあるもの、というような意味合いで使われていた。

 

ビジネスとしてのアニメ・ゲームなどの業界において前述の意味でのIP(以下同じ)が持続可能な形で成り立つにはどうするべきか、について、クリエイターの著者が、実体験を踏まえて分析しているもの。洋邦の有名どころの作品シリーズを俎上に上げて分析をしていて、IPが持続するには、ストーリーIPではなくキャラクターIPまたは世界観IPであるべきという分析や、IPがクリエイターから離れ、単体で法人化していくところまで行くのがIPとしての成功である、という指摘は、ビジネスとしての持続可能性を考えれば、そういう考え方に行きつくことは、数々の例示*1もあって、説得的にも思われた。

 

他方で、それは、あくまでもビジネスとしての話であり、ビジネスとして広く公衆に対して訴求することを前提にしたものであって、特定のクリエイターにとってはどうかとか、また、一人の鑑賞者としての立場で見たときにはどうかというと、別の話になる。あまりにもビジネスとしての持続可能性(なぜそれが重要なのかについても十分に説明はなされているのだが…)に焦点が当たりすぎている感があり、商売っけが前面に出過ぎていて、僕にとっては、違和感のようなものが最初から最後まで払拭できなかった。まあ、僕がこの種のビジネスに関与する側ではない(少なくとも現時点では)以上はやむを得ないのだろうが。

*1:もっとも、こちらがテレビも映画も碌に見ないので、特に古いものを除いては、よくわからないものの方が多かったのだが…。