本屋で見つけて購入。衝動買いという奴ではあるのだが、お勧めにするに足る良著と感じた次第。
残念ながら、僕自身は将棋の世界のことは知らないのだけど、一人の職業人(という言い方が良いのかは不明だが)のうつ病闘病記として興味深く拝読した*1。文章がうまい(と思う)ので、すっと読むことができる。
全体としては淡々としている感もあるが、自分の頭が働いていないのに愕然とする様子とかは、こちらも精神面で追い込まれて、近い状態になったことがあった*2のを思い出して、慄然とした。もっとも、体調が悪いと本が読めないことは時々あるから、そこからすれば想像の範囲内という気もしないではないのだが…。
また、電車のホームに吸い込まれるという感覚の描写は、確かにそういうことがあるのかもしれないと思わせるものを感じた。こういう描写を読んでおくと、自分が知らず知らずに著者と近い状態になったときに気づきやすいかもしれない。そうなれば何らかの対策が講じやすいかもしれない。そういう意味でも本書は読んでおくべき本ということもできるだろう。
闘病記という意味では、精神科医の実兄がおられて、慶応病院に入院でき、ご家族のサポートも*3、友人の方々のサポートも相応にあったように見える*4ので、同じような状態にあったほかの方々よりも恵まれていたのは事実なのではなかろうか。その点は読む側が留意すべき点なのかもしれない。
個人的に印象に残ったのは精神科医のお兄さんのうつ病についての言葉*5。医者でもあり、患者の肉親でもある立場からの言葉は肝に銘じるべきと感じた。
「うつ病は必ず治る病気なんだ。必ず治る。人間は不思議なことにに誰でもうつ病になるけど、不思議なことにそれを治す自然治癒力を誰でも持っている。だから、絶対に自殺だけはいけない。」
「精神科医というのは患者を自殺させないためだけにいるんだ」
「だいたいいまだに心の病気といわれている。うつ病は完全に脳の病気なのに」